追悼・むのたけじさん

    2016/08/26

     1945年8月、日本の敗戦とともに、自らの戦争責任を明らかにして朝日新聞社を退社し、以後一貫して戦争に反対し続けたジャーナリスト、むのたけじさんが8月21日死去した。101歳。晩年まで言論活動は旺盛で、従軍記者の経験などを元に戦争の非人間的な本質を説き、戦争を絶対に許さない、起こさせないと訴えた。とりわけ新聞や放送のジャーナリズムの現場で働く後輩たちには、叱咤と激励を絶えず送り続けていたように思う。
     沖縄で開かれたマスメディア労組の集会で、むのさんの話を直接聞く機会があった。強く印象に残っているのは、戦争を止める原動力の一つして、ジャーナリストのヒューマニズムを挙げたことだ。銃砲弾が飛び交う戦場では、相手を殺さなければ自分が殺される。人は人でなくなる。戦時中、そんな戦地に多くの記者が従軍し、身を置いたが、どんなに危機に陥っても、自分で銃を取ろうとする者はいなかった。そこに、ヒューマニズムに根ざす近代の情報産業の命があるのではないかと、むのさんは強調した。戦争を止めるためにマスコミがなすべきは、真実を暴き出し、民衆に伝えること。「マスコミが本来の役割を果たせば、民衆が戦争を止めるエネルギーを作り出す」。
     互いに意見をぶつけ合うことが必要だ、とも。戦時中は、職場でも2人では会話ができても、3人目が来ると皆口をつぐんだ。だから観念論はあっても、戦争をやる人間を止められなかったという。
     むのさんの信念は、後輩のわたしたちが誰よりも強く受け継いでいかなければならないと思う。