翁長さんの遺言

    2018/08/10

     沖縄県の翁長雄志知事を悼む声が広がっている。8日の死去から一夜明けた朝、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前で、市民らが黙とうをささげた。県民栄誉賞を授与された歌手の安室奈美恵さんは「沖縄の事を考え、沖縄のために尽くしてくれた翁長知事のご遺志がこの先も受け継がれ、これからも多くの人に愛される沖縄であることを願っております」とホームページで弔意を表した。
     米軍普天間飛行場(宜野湾市)の辺野古への県内移設阻止を訴え続け、膵がんの公表後も病身を押して政府と対峙した。7月末には、前知事が承認した辺野古基地建設に伴う埋め立て許可を撤回するための手続きに着手。公有水面埋立法で事業者に義務付けられている「環境保全・災害防止への十分な配慮」という要件が満たされていないことがその根拠だ。緑の党グリーンズジャパンは9日発表の声明で「『埋め立て承認撤回』は事実上の遺言」といい、「翁長知事が問うたのは、辺野古新基地問題にとどまらず、地方自治や民主主義を踏みにじるこの国の政治であり、沖縄の民意に向き合おうとしない『本土』の人びとの意識のありようだ」と指摘した。
     翁長さんは戦後の米占領下で生まれ育った。沖縄自民党の幹事長を務めるなど「生粋の保守政治家」。その彼を変えたのが、2013年1月、那覇市長時代に参加したオスプレイ配備撤回を求める東京行動での体験だと言われている。県内の市町村長らと銀座をパレードした際、「琉球人は日本から出て行け」などの心ない言葉を浴び、むき出しの「沖縄差別」を受けたのだ。そして翌年、「イデオロギーよりアイデンティティー」を掲げて知事選に出馬した。
     辺野古沖は、絶滅危惧種であるジュゴンの北限の生息地であり、海には貴重なサンゴ礁が生きている。だが、移設を阻止すればいいというものではない。軍隊そのものをなくしていく。米国の傘の下で身を守るのではなく、対話による平和外交を確立する。それが「沖縄の民意」ではないか。
     沖縄の未来は、日本の未来につながっている。