開戦前夜

    2017/11/17

     「愛國の花」「一杯のコーヒーから」「愛馬進軍歌」--。軍国主義の時代に流行した歌の数々を役者たちが元気よく歌う。戦争へと突き進む世の中の空気を肌で感じながら……。
     太平洋戦争開戦前、東京・浅草のレコード店を舞台にした「きらめく星座」が東京の「紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYA」で23日まで上演中だ。
     作者は劇作家の井上ひさしさん。「昭和庶民伝三部作」の第1作(初演は1985年)で、劇団「こまつ座」の公演作品のなかでも「再演を熱望する声が多く寄せられる」という。
     国が戦争へと突入することを扇動し、「満州(現中国東北部)はユートピアだ」などの情報を庶民に流した。「当たり前の生活を守るために、間違った情報に惑わされてはいけない」。井上さんはこんな思いでいたのだろうか。
     「なぜ、いまこの芝居を」との問いに、井上さんの三女で劇団の代表を務める麻矢さんはこう答えた。「父がこの作品を書いたときは、過去を忘れないという気持ちがあったと思う。けれども、いまはこれが『未来の物語』になるかもしれない」と。
     劇は笑顔にあふれているが、冒頭と終幕には防毒マスクが用いられる。そして開戦前夜の1941年12月7日のシーンで幕を閉じる。
     自民党は憲法論議を再び始めた。早ければ年内に党改憲原案をまとめる予定で、自衛隊の明記や緊急事態条項の創設などをもくろむ。
     「私たちは演劇を通じて抵抗していく」と麻矢さんは語った。「戦争ができる国になるのは嫌だ」。それぞれの手段で意思表示をなければならない。