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【広島発】オスプレイ本土訓練が本格化 -配備と低空飛行反対で市民ネット結成

 広島県北部から島根県にかけて広がるエリア567とよばれる米軍機の訓練空域下では低空飛行が近年増えている。4月下旬に低空飛行の被害が深刻な島根県浜田市旭町などを訪れ、米軍機の対地攻撃訓練の仮想標的となっている同町の刑務所施設付近にある「あさひ子ども園」などで関係者の話を聞いた。園長によると、1月に町内の民家の窓ガラスが衝撃波で割れる被害があった時は、墜落したかと思うような爆発音と風圧を感じ、園児が「子ども園を壊さないで」と叫んだという。「園児の情緒面に与える影響を考えると…」と表情を曇らせた。江津市桜江町では米軍機の飛行訓練に遭遇した。谷間の上空で3機が旋回して空中戦の訓練を十数分続けた。高度があったが、機影がはっきり見え、腹にずんとくる轟音で日常生活にはない危険と不安を感じさせた。この1週間後にはエリア内の広島県三次市で米軍機が小学校の真上などを低空飛行し、子どもたちや住民を脅かした。
 岩国基地の米軍機を中心とする低空飛行訓練に加え、3月6日からは沖縄・普天間基地に配備された垂直離着陸輸送機オスプレイの本土訓練が始まった。オスプレイは安全性に問題があり、世界一危険な飛行機といわれるが、米軍は岩国基地を拠点にエリア567を含め東北から九州までの広い空域で低空飛行訓練を行う。訓練地域では「本県上空も訓練ルートに設定されており、安全性に疑問がある機体が野放図に飛び交う事態を認めるわけにはいかない」(3月23日付福島民報論説)など不安と懸念が強く、全国知事会会長も3月21日に安倍晋三首相にオスプレイの訓練に関して自治体への十分な情報提供と説明を要求した。首相は「(米側に)情報提供を要請している」と答えたが、6月下旬までに5回実施された本土訓練では、岩国基地の地元山口県に機数、飛行時間、高度、訓練ルートなどを事前に示したのは初回だけ、2回目以降は機数と大まかな到着時間だけと早くも横暴ぶりをあらわにしている。
 こうした中、5月12日、三次市で「オスプレイの配備と米軍機の低空飛行を許さない市民ネットワーク」の結成集会が広島、島根、山口、岡山、大分の5県から約90人が参加して開かれた。参加者は岩国基地の拡張・強化や米軍機の低空飛行訓練に反対してきた住民ら。それぞれこれまでの運動の経緯と現状を報告、住民の安心と安全を守るために市民と自治体が一体となって日米両政府にオスプレイ配備の撤回と米軍機の低空飛行の中止を迫っていくことを宣言した。
 とはいっても米軍機の低空飛行はやまず、6月4日にはエリア内の北広島町や三次市でパイロットの顔が見えるほどの超低空で飛行、小学校近くで電車が通る時のガード下レベルの103.6デシベルを記録した。翌5日には浜田市旭町で1日の70デシベル超の騒音回数が2011年12月の測定噐設置以来、最多の45回を記録した。
 さらに7月1日には防衛政務官が山口県と岩国市を訪れ、普天間基地に追加配備するオスプレイ12機を7月最終週に岩国基地に陸揚げすると通告した。報道によると、日米両政府は追加配備が選挙情勢に影響しないように参院選後の日程にしたという。
 日本の航空法では150メートル以下(人・家屋密集地では300メートル以下)の飛行を禁止しており、米軍機もこの基準を用いるとしているが、守られていない。学校や市街地の上での低空飛行訓練は米国では許されていないし、オスプレイの訓練や配備もハワイや米本土では住民の異議で撤回されたり、中止されたりしている。政府が安保条約・日米地位協定下で日本の空の主権を放棄しているために命と安全の二重基準がまかり通っているのが現状だ。現状の壁は厚いが、二重基準が一目でわかる安保の最も弱い環といえ、市民・住民が自治体と一体となって求めていけばオスプレイも低空飛行もやめさせることができると確信している。(堺真知)


【広島発】上関原発とオスプレイ監視が課題?安倍政権で始まる危険

 憲法改悪、原発容認を公言する政治勢力をバックにした安倍晋三政権の登場で広島では早くも二つの問題に直面している。
 一つは中国電力が建設を目指す上関原発計画だ。3・11前の原発の新増設計画は全国で12基。うち原子炉設置許可を受けて建設中が中電島根3号機など3基、着工前が上関1・2号機など9基で上関は最も計画が進んでいた。民主党政権は2030年代の原発ゼロ実現のため、本体工事中の原発の工事再開は認めたが、着工前の原発を含め、新増設は原則認めない方針を示していた。しかし、安倍氏は政権に着く前の21日上関の地元・山口県庁で記者会見し、2030年代原発ゼロ方針の見直しを表明。組閣後、茂木敏充経産相が前政権の方針は「再検討が必要」と明言した。上関は新設が認められるとしたら最有力とみられる。
 上関計画をめぐっては、中電が建設予定地の公有水面埋め立て免許を得て、埋め立てに着手したが、予定地対岸の祝島住民らの抗議行動で工事が停滞する中で3・11を迎え、工事が中断。埋め立て免許期限切れ直前の12年10月5日に免許の延長を山口県知事に申請していた。延長申請に対して当時の藤村修官房長官と枝野幸男経産相は、建設を認めない方針を示し、山本繁太郎山口知事も「申請は許可できない」と明言していた。逆風下の中電の延長申請は、原発容認の自民党への政権交代で風向きが変わるまで現状維持を狙ったとみられていた。
 自民党圧勝の選挙後、山本知事は県議会で「考え方は政権交代の有無にかかわらず変わらない」と述べたものの、別の質問には「新たな原発建設をどうするか国の責任で示していただきたい」と微妙な姿勢を示した。県の最終決定は年明けとみられる。
 埋め立て工事をめぐって中電は抗議の島民ら4人に計4800万円の損害賠償を求めるなど反対運動を「恫喝する」訴訟を相次いで起こしている。権力や企業が反対活動を抑え込むためのスラップ訴訟だ。裁判所の姿勢をみると、山口地裁が11年3月25日に陸域の工事妨害の場合1人・1団体あたり1日70万円の制裁金の支払いを命じ、12年9月、最高裁が海域の埋め立て工事妨害禁止を求めた仮処分を認めるなど3・11後も中電勝訴の判断が続いている。延長が認められれば、計画反対運動は非常に厳しい状況に直面する。
 もう一つの問題は米軍岩国基地を中継基地とする垂直離着陸機MV22オスプレイの本土訓練が本格化することだ。2012年だけで2回も墜落事故を起こし、専門家も欠陥機と認めるオスプレイの訓練が、住民の安全と安心を脅かすことになるのは必定だ。10月に島ぐるみの反対を押し切って米軍がオスプレイを強行配備した沖縄では、配備前に結ばれた安全確保のための日米合意に反する飛行が相次いでいる。
 広島県内では2012年上半期に米軍機の低空飛行の目撃件数が昨年同期の1.5倍になり、調査を始めた1997年度以降で最多となった。広島県北部と島根県にまたがるエリア567と呼ばれる米軍の訓練空域下や広島県北部を横切るブラウンルートと呼ばれる飛行コース下では11年から12年にかけて小学校や子ども園の上空をジェット機が低空飛行し、子どもたちがおびえて床に伏すなどの被害が続いている。オスプレイの低空飛行訓練は危険と恐怖を倍加することになるだろう。
 安倍政権下で始まる2つの動きを監視するメディアの役割が問われる年になると思っている。
(堺真知)