小豆島発

【小豆島発】何のため? 渓谷美破壊のむだづかい… 小豆島で続くダム建設と闘い

 小豆島に寒霞渓という紅葉の名所があることをご存じだろうか。切り立つ岩、猿が走り回る。人里に近い渓谷美が売りだ。振り向けば波静かな瀬戸内海が一望できる。
 寒霞渓をシャットアウトするように、コンクリートの堰堤がほぼ完成している。内海ダム。堰堤の長さは423㍍、四国の水がめ早明浦ダムの400メートルよりも長い。計画されている総貯水量は106万立法㍍。早明浦の300分の1だ。この程度の貯水量の池は香川にはいくつもある。185億円という総工費をなんのためにかけたのか。コンクリートの壁で景観を台無しにするためか。それともつくることで利益になる誰かいるのか。考えてみたい。

▼「見直し」の中での建設
 ダムの地元小豆島町神懸通りには「寒霞渓の自然を守る連合会」(代表山西克明さん)がある。「利水と治水を目的にして香川県が計画しているダムだが、そのどちらにも役にたたないだけでなく、寒霞渓の景観を台無しにする」と反対運動を続けている。月1回の高松市の香川県庁前での宣伝行動もこの1月7日の第1月曜日で93回目を迎えた。
 ダムはほぼ完成して、昨年12月下旬から試験湛水がはじまっている。実は民主党政権の公約違反第1号がこの内海ダムなのだ。
 09年の政権交代のあと前原国交相が全国のダム見直しを宣言した。なかでも内海ダムへは同年12月に視察に訪れ、香川県に計画見直しを要請した。県知事はこれを拒否、国の補助金未定のまま本体工事をスタートさせる。
 国が10年度の補助金(負担金)をどうするのかに焦点は移った。10年3月、住民は長野県の浅川ダム、熊本の 路木ダムの市民運動と手を携えて前原大臣への面会を要請した。3月25日は国交省政務官面会までいったが、翌26日に前原大臣は「県の判断に文句はつけられない」とかいってほぼ全額の補助金を発表した。
 
▼裁判で反対運動
 住民たちはこの間、月1回の県庁前宣伝を続け、事業認定取り消し訴訟はじめ法的手段に訴え勉強会やアピールする集会と力を入れてきた。県は裁判では必要な資料を出さないなど引き延ばしをはかってきた。「必要性の科学的根拠を説明できないのに一方的に」工事を進めてきたのだ。
 利水でいえば97年に完成した吉田ダム(小豆島町福田)が210万立法メートルの有効貯水量をもち、渇水時も断水の心配はなくなっている。治水でいうと県が主張する1974(昭和49)年、76(昭和51)年の水害はダムの流域の別当川ではなく別の水系の被害をさしており、ダムよりも河川改修が必要であることを住民は訴えてきた事情もある。さらに南海トラフ巨大地震が起きればどうなるかという新しい心配もある。
 5月に予定されている「原告側証人尋問」には志岐常正京大名誉教授(地質学)、丸山博室蘭工大大学院教授(公害システム専攻)、水源連代表らが準備を進めており、自公政権の公共事業ばらまき方針に歯止めをかける意味でもしっかり戦って科学的根拠のなさを明らかにしていかなくてはならない。
 どうみてもそんなに必要ではないと思われるダム建設がなぜ進むのか。「結局、土建業者のためのコンクリート無駄遣いのためでしかないのではないか」?外からはそんな声も聞かれる。新内閣で公共事業が息を吹き返すとされる昨今。小さな島のダム建設は改めて問題になる。
 「県庁前宣伝にとりくむメンバーは平均年齢82.3歳、地元の若い人はカンパには応じてもらっているがダム賛成の企業で働かなくてはいけないから声は上げにくい。それでも高松で応援していただいている市民のお方とも一緒に水溜めるなという運動をすすめる。がんばりますよ」と山西代表は意気軒昂である。(羽)