今週のひと言

某陣営選対本部長と某新聞記者の会話(フィクションです)

記者「選挙おつかれさまでした」
本部長「ああ、○○新聞さんか。うちのボスは2千票差でダメだったよ」
記者「惜しかったですね。まあ、うちの情勢予測でもお宅の先生は落選確実でしたけど」
本部長「予測が当たりすぎるんだよ、まったく。電話で投票お願いしても、どうせ逆転できないでしょ、って言われちゃうんだから」
記者「小選挙区制になってもう長いんで、予測の精度がどんどん上がっているんですよ。過去データの蓄積がたまって、計算ソフトも向上しているし」
本部長「情勢予測がドーンと出ちゃうと、みんな投票行かないんだよなぁ…」
記者「行っても白票・無効票入れたりして」
本部長「うちはどこかと違って、支持者が投票行ったかどうかチェックなんてしてないよ」
記者「小選挙区制の問題ですかね」
本部長「それもあるけど、半分近くの有権者が投票に行ってないわけだからねぇ」
記者「その人たちが動くような運動しないといけないんでしょうね」
本部長「戸別訪問禁止って本当はおかしいだろ? 仕方ないから電話作戦だよ」
記者「公示期間中に電話するより、日ごろの野党・市民連合で情勢作っていく、とか」
本部長「もう予想屋みたいな報道はやめて、もっと政策論争やってよ」
記者「僕は書いてるんですけど、デスクが紙面をくれなくて…」
本部長「偉い人がソーリと料亭で飯食ってるからだろ? 君も一緒なの?」
記者「そんなことないですって(笑)」


首相の賭けと素浪人の勝利

 「疑惑隠し解散」で、「身勝手解散」だったが、「いまなら勝てる解散」でもあった、首相の深謀での総選挙は、思惑違いは多かったのだろうが、結果的には、自公勝利に終わった。「賭に勝った安倍、流刑地の女王・小池、2週間で野党第1党の党首になった素浪人・枝野」という仏紙「フィガロ」の評は、「言い得て妙」。その結果、「民進党つぶし」には、「成功」したが、「立憲民主党」が生まれて躍進し、「立憲野党と市民の共闘」は、したたかに、むしろこれまでよりはっきりした姿で前進した。
 パンダの命名にかこつけて、首相の会見より2時間前に「希望の党」の発足を発表した小池百合子東京都知事の「小池劇場」も、少なくとも一般的には、党の政策も、体制も明らかになっていないのに、「合流」を口走り、議員総会で強引に決めてしまった、民進党の前原政治代表の独断専行も、すべてメディアを意識した行動だった。
 小池知事の民進党全部の受け入れは「さらさら」考えず、考えの異なる方は「排除致します」という本音の発言や、「憲法改正」「安保法制容認」の「踏み絵」がなければ、「希望の党」は本当に野党第一党に躍り出ていたのかもしれない。「自民大勝の最大の功労者は、前原、小池」という見方に異論を唱えるのは難しかろう。
 安倍首相は23日の記者会見で、改憲について「与党、野党にかかわらず幅広い合意に努力する。第1党であろうと、第2党、第3党、第4党とも合意を目指す」といい、「政治なので、皆さますべてに理解を頂ける訳ではないが、そういう努力を払っていくのは当然」」と、改憲発議でも、「強行」があることを否定しなかった。選挙ではほとんど語らず、メディアを利用してぐいぐいとことを進める。安倍政治との新たな対決だ。


市民の意思を示そう

 安倍晋三首相の無謀な国会解散による総選挙が22日、投開票される。最大の争点は「民主主義」であり、この国は重大な局面を迎えている。
 森友学園、加計学園問題というスキャンダルを「知らなかった」で追及をかわして国会を閉会させた。その後の臨時国会では所信表明演説すらなく、突然の解散だ。
 「1億総活躍」「希望を生み出す強い経済」などと連呼してきた安倍内閣だが、特段の成果はない。電通社員の自殺やNHK記者の過労死などで浮き彫りになる人々の疲弊。なかなか進まない震災や原発被災地の復興。「市民を守る」と言いながら、山積する問題から目をそむけてばかり。霞ケ関の役人たちもだらしがない。各省庁の人事権が内閣人事局に移され、官僚たちは官邸の顔色をうかがうようになった。
 私たち有権者はどうか。「18歳選挙権」が施行された昨夏の参院選。18歳と19歳を合わせた投票率は46・78%程度で、全体(54・7%)を下回った。若い世代の投票率の低さは、「民主主義は市民が守る」ということを、大人が子どもに示していないからではないだろうか。
 野党の分裂などで政界は混乱している。だが、想像してほしい。「自分ファースト」と揶揄される首相がこのまま権力を掌握し続けるとどうなるか。憲法9条は危機にさらされている。
 まずは投票に行き、私たちの意思を示そう。


憲法とヘリ炎上~衆院選の争点

 10月22日投開票の衆院選を巡って、新聞各紙は12日付朝刊で一斉に序盤の情勢を報じた。「安倍一強」自民党は堅調、小池百合子氏支配の希望の党は追い風なく伸び悩み、小池氏に排除された民進前職らの立憲民主党に勢い―といったあたりが各紙共通だ。自民党が堅調だといっても内閣支持率は伸びていない。アベ政治が支持されているわけでも、自民党の地力が伸びているわけでもない。公示直前の野党第1党の分裂に伴う混乱で、相対的に自民党が強く見えている可能性がある。衆院選は見かけの上では「自民・公明」と「希望・維新」、「立憲民主・共産・社民」の3極構造だが、憲法改正や安保法制を軸に取れば、希望の党は自民党の補完勢力であることは明らかだ。選挙結果にもよるだろうが、仮に大連立に進むなら、自民党への最大サポーターになる。そうした選挙戦や公約の実相を見極めるなら、最大の争点は憲法、中でも9条の改悪を許すのかどうかだ。
 12日付朝刊には、この争点に深くかかわるニュースが載っていた。沖縄本島北部で飛行中の米軍ヘリが出火。民有地に不時着して炎上した。「あわや」の事故だ。沖縄配備の米軍機の事故・トラブルが相次ぐ。オーストラリア沖では欠陥機との指摘が絶えない垂直離着陸輸送機オスプレイが墜落し、乗っていた海兵隊員に死者も出た。そのような米軍機が毎日、上空を飛び交っている沖縄では、住民が日常的に危険にさらされている。確かに北朝鮮のミサイル・核開発は危機かもしれない。ならば沖縄は、今まさに住民の命が危険にさらされているリアルな危機ではないのか。
 米軍機の事故に対して安倍政権は遺憾の意を表明し、時には形だけの抗議をしてみせるが、本気で沖縄の住民の命を守るつもりがあるのか。名護市辺野古では、沖縄県の反対に耳を貸さず、恒久的な新基地の建設を強行している。衆院選では、安倍政権は国民の生命・財産を守るつもりがあるのかどうかが、全国で問われるべきだ。
 東京発行の一般紙各紙では、この事故の扱いは東京新聞が1面トップ、朝日、毎日も1面なのに対し、読売は社会面、産経は第2社会面にとどまった。意図的に過小評価するのだとしたら、危機の放置に加担することになる。


主権者国民の力が問われている

 「憲法改正を支持し、改正論議を進める」「外国人地方参政権に反対する」「党に資金提供する」——小池百合子・東京都知事が代表を務める新党「希望の党」が、公認に当たって立候補予定者に突きつけた10カ条の政策協定書は、この党の本質を表している。
 3日に都内であった市民連合の会見で中野晃一・上智大教授はこう喝破した。「憲法改正を支持しろとも書かれているが、憲法のどこをどう変えるのかの説明もなしに支持しろというのは、無茶苦茶だ。金額も書かずに金をもってこいというのは、奴隷契約書です」
 在日韓国人団体「在日韓国青年会」(朴裕植会長)も3日、声明を発表し、外国人地方参政権付与反対を掲げたことを批判。小池知事が関東大震災朝鮮人犠牲者への追悼文を見送ったことにも触れて、「偏狭なナショナリズムをもつ公人」と記した。
 政策協定書の第1項目に「『寛容な改革保守政党』を目指す」と掲げているが、改憲に前のめりな排外的な右翼政党と呼ぶのが実体にふさわしい。とにかく変えたい。何でもいいから変えたい。自己目的化した安倍晋三首相の憲法観とも共鳴し合っているようにも見える。
 大義なき解散と新党の出現で、野党第1党は解体した。私たちが目の当たりにしているのは、巨大な右翼2大政党が憲法改正を正面に掲げて、選挙選に挑もうとする、これまで見たことのない事態だ。
 今こそ、主権者としての国民の出番である。憲法を変える、変えないの最終判断は私たちの側にある。政治の姿を変える、変えないという選択も私たちの手にある。日本国憲法の下で戦後築きあげてきたものを「リセット」させていいのか。傍観者であることは許されない。


疑問だらけの秋

 誰に聞いたらいいのかわからないし、誰にも答えられないものもあるかもしれませんが、このところ頭に浮かぶのは疑問符ばかりです。
「国会議員なのに国会に行きたがらないって、職務怠慢じゃないんですか?」
「解散は総理の専権事項って、憲法のどこに書いてあるんですか?」
「解散は考えてないって言っていたときからひと月も経っていないのに解散するのって、ただの嘘つきなんじゃないですか?」
「テレビには生出演しても記者会見しない総理って、新聞が嫌いなんですか?」
「消費税の使い道をどうするか、なんて議論、どこでしていたんですか?」
「東京でも大阪でも、なぜ地方自治体の首長が国政政党の代表をやっているのですか? そんなに地方自治ってどうでもいいことなんですか?」
「改革保守って言葉、形容矛盾じゃないですか?」
「最大野党が、いきなりできた新しい党に合流するって、いったいどこで決めたんですか? 党所属の議員や全国の党員の意見は聞いたんですか?」
「党代表が今度の選挙に無所属で立候補するって、じゃなんで党首選に出たんですか?」
「四野党共闘で統一候補にして臨めば議席を奪えるという予測もある小選挙区もあるのに、何でわざわざ四野党合意を壊すようなことをするんですか?」
「Jアラートって、役に立っていないんじゃないですか?」


「国会抜き記者会見」を首相の「道具」にするな

 安倍首相は、どうやら臨時国会を開くと見せて所信表明もせず、質問も受けないまま25日の記者会見で解散を表明、自分勝手な「争点」や「公約」をぶちあげて、「朝鮮危機」を煽り、総選挙で票をかっさらおうという魂胆のようだ。
 この記者会見の方式、国会では説明せず、メディアを自分の伝声管として使うという政治手法をメディアは唯々諾々として受け入れるのだろうか?
 このやり方、読売と「改憲集会」という自分の好きな場所で「9条自衛隊改憲論」をぶち上げ、国会での説明を拒否したやり方と全く同じ。メディアは結局、首相のいいなりにその主張を伝え、首相の発言を既成事実にした。政治はその方向で動いている。
 今回、メディアの多くは「大義なき解散」と解散を批判しているが、一方で、自民党が当然先行する「公約」や「争点」を紹介し、野党の主張はその補完物になってしまっている。果たして、これでいいのか? 
 メディアは「事実」を報じなければならない。しかし一方で、その「効果」や「影響」がどうなるかも見定め、必要な評論や、別の事実を紹介しなければならない。メディアは結果的に、首相の勝手な「道具」にならないための工夫をしなければならない。
 ここであえて、提案したい。この際、メディアは、首相会見は取材はしても、当日、即時の報道は控え、野党党首にも同様に記者会見を求めて、翌日あわせて掲載することで、「大義なき解散」への姿勢を見せられないか。
 佐藤首相が退任記者会見を誰も居ない会見場のテレビの前でしゃべりまくった記憶、環境庁(当時)の記者クラブが石原慎太郎長官の閣議後記者会見を何ヶ月か拒否した記憶がある。どちらも、約束違反や説明拒否を怒った記者たちの行動で、国民の「知る権利」には何の障害にもならなかった。
 この際、メディアはこの首相の会見の「道具化」の姿勢に抗議する意思を明らかにし、野党は揃って党首が記者会見し、メディアに同等の報道を求めるべきだ。国会召集の日の紙面を勝手な記者会見で覆わせてはならない。


まるで“ヘイト司法”ではないか

 これではまるで“ヘイト司法”ではないか。そう思わざるを得ないような判決が出た。日本政府が朝鮮学校を高校無償化の対象から外したのは違法として、東京朝鮮中高級学校の元生徒62人が国を相手に賠償を求めた訴訟で、東京地裁の田中一彦裁判長は9月13日、訴えを認めなかった。判決理由であれこれ並べているが、要は、朝鮮総連、北朝鮮とつながっているとして日本政府が取っている差別的措置を、「裁量」という便利な言葉で全面的に追認するものだ。その具体性を欠いた説得力のなさは、裁判官による政府への忖度と言ってもいい。
 この判決のおかしさは、もっともらしい法律論からいったん離れてみれば分かる。朝鮮学校で学ぶ生徒は日本で生まれ育ち、将来にわたっても日本に居住する。日本の大学は、日本の高校と同じように朝鮮学校の卒業生にも門戸を開いている。何よりも、在日コリアンは納税者として日本社会に応分の貢献をしている。そうした彼らが、朝鮮学校に在籍しているという一事で、日本の高校に通う生徒たちと異なった扱いを受けるのは差別と言うほかないし、その差別を是正できないなら、日本は三権分立の法治国家であることすら危うい。
 同種の訴訟は全国で5件あり、地裁判決は広島、大阪に次いで3件目。7月19日の広島地裁判決は原告敗訴だったが、同28日の大阪地裁判決は、国の政治的外交的な意見に基づく違法な処分と認定していた。その後に続く司法判断として東京地裁判決は注目されていたはずだが、マスメディアの扱いは必ずしも大きくはない。東京発行の新聞各紙では、1面で伝えたのはこの結論を歓迎する産経新聞だけ。朝日新聞に至っては、第3社会面に見出し2段、写真もなし。記事に気付かなかった読者もいるのではないか。
 名古屋地裁と福岡地裁小倉支部の訴訟がこれから判決を迎える。ミサイル発射、核開発で北朝鮮への批判は高まっているが、それとこれとはまったく別の話だ。裁判官たちが自由な心証でまともな判断を示せるような社会環境であるためには、世論の後押しが必要。そのためにはまず、今回の判決のおかしさが広く知られなければならない。マスメディアの責任は大きい。


記録作家、林えいだいさんの言葉

 「植民地支配は人間の尊厳を奪いつくす」
 福岡県の筑豊地方を拠点に、朝鮮人強制連行や公害、戦争などをテーマに執筆を続けた記録作家、林えいだいさんが今月1日、83歳の生涯を閉じた。冒頭の言葉は、長年の聞き取りや取材で林さんがたどり着いた「真実」だ。
 神主だった父は戦時中、炭鉱から逃亡した朝鮮人をかくまった。特別高等警察に連行されて拷問を受けた後、死亡した。残された母は言った。「人間はぶれるものじゃない」。早稲田大学への進学で上京した林さんは、足尾銅山鉱毒事件のルポルタージュ「谷中村滅亡史」(荒畑寒村著)を読んで刺激を受け、「筑豊の史実を掘り起こす」と決意。同大を中退して帰郷した。「清算されない昭和―朝鮮人強制連行の記録」「実録証言 大刀洗さくら弾機事件―朝鮮人特攻隊員処刑の闇」――。その後の著書は50冊以上に及ぶ。
 「安倍9条改憲NO!」を合言葉に、「憲法破壊」阻止のための全国市民アクションの発足集会が8日、東京で開かれた。ルポライターの鎌田慧さんや作家の澤地久枝さん、落合恵子さんらが発起人。「改憲反対の一点で手をつなごう」と呼びかける。
 「過去、日本が何をしてきたのか、きちんと点検しなければ、同じ過ちを繰り返す」。林さんはこうも話していた。その教訓とともに、「対立」ではなく「対話」でこの国に平和の輪を広げていこう。


危機を煽る政府に加担したメディア

 北朝鮮の弾道ミサイル発射のニュースで一色に染まった8月29日早朝のテレビ報道は、これから戦争でも始まるのか、と思わせるような中身だった。チャンネルを回すと、どの局もJアラートの静止画面。「頑丈な建物や地下に避難して下さい」とアナウンサーが政府の呼びかけをおうむ返しに繰り返していた。
 北朝鮮のミサイルが日本上空を通過するのは5回目で、今回が初めてではない。日本が標的にされたわけでもないし、被害が出たわけでもない。報道によると午前5時58分に発射され、14分後の午前6時12分に襟裳岬東約1180キロの太平洋上に落下した。一般の人々の感覚では、あっという間の出来事だっだ。元ライブドア社長の堀江貴文氏がツイッターで「マジでこんなんで起こすなクソ。こんなんで一々出すシステムを入れるクソ政府」とつぶやいたのも不思議ではない。
 ところがテレビや新聞は、「怖かった」「どこに逃げればよいのか」と戸惑い、不安を募らせる人々の声を繰り返し取り上げ、危機を強調する。驚いたのは、午前6時過ぎに落下が確認されたにもかかわらず、休校にした学校は公立で4校、私立で5校に上ったという。過剰反応というほかない。
 西日本新聞(8月25日付)が、熊本県上天草市で24日にあった弾道ミサイル発射を想定した避難訓練の様子を伝えている。住民の感想が的を射ている。勤務先の建物内に避難をした男性は「近くに落下したら建物内でもどうしようもないだろう。核弾頭だったら被害は甚大だ…」。60代男性は「戦時中の竹やり訓練のようでばかげている。地下壕を造るのならまだしも、何にもならない」と話したという。もっともだ。
 政府は「頑丈な建物や地下に避難して下さい」と言うが、真剣に危機管理を考えているなら、原発が狙われた時にどう対応するのか。再稼働など到底考えられないが、この点について政府は沈黙を続ける。メディアはうわべの危機を煽る政府に加担するのではなく、冷静な思考の下、原発大国が抱える潜在的な危機にこそ目を向けるべきだ。