高知発

【高知発】いびつな民主主義

 突然のことだった。普天間飛行場(沖縄県)に配備されている新型輸送機MV22オスプレイ3機が3月6~8日、高知県上空などに設定した「オレンジルート」で本土初訓練を実施した。
 在日米軍が事前通告していた飛行ルートは九州地方。それが訓練まで24時間を切って突如、変更された。その理由は何か。米軍からは詳しい情報提供はない。こちらが防衛省に問い合わせして、陸上自衛隊が大分県日出生台射撃場で訓練を予定していたことが原因だと判明した。
 本土2度目の訓練となった19~23日は事前通告さえもなかった。19日午後になって防衛省から各自治体にもたらされた情報は「オスプレイ4機が岩国基地に飛行する可能性がある」とだけ。米軍は最後まで訓練ルートも、滞在期間も全く明らかにせず、離着陸の状況や目撃情報などで訓練ルートなどを絞り込むしかなかった。
 高知新聞など多くの地元メディアが本土初訓練を大きく報道した一方で、オレンジルート下の地元住民はある意味、冷静だった。
 「オスプレイよりも普段飛んでいる米軍機の方がよっぽどうるさくて迷惑」
 そういった声が老若男女から聞かれた。確かにその通りである。米軍機の目撃情報をまとめている高知県本山町の資料では、1993年には約300回の米軍機が飛来した。稜線(りょうせん)よりも低く飛ぶ米軍機の爆音も珍しくない。地元保育所によると、昼寝している園児が泣いて飛び起きるほどだという。
 騒音の問題だけではない。米軍機は1994年に早明浦ダム、99年に土佐湾に墜落している。近年の目撃情報は年数十回に減っているとはいえ、次の「墜落」が明日ともいえなくないのだ。
 オスプレイの本土飛行の背景にみえてくるのは、日本の民主主義のいびつな“かたち”だ。
 日本の航空法では高度150メートル以下の飛行は認められていない。しかし米軍機は、日米地位協定に基づく特例法で航空法は免除されている。高度100メートルで飛ぼうが、60メートルで飛ぼうが許されるのである。
 同じ敗戦国のドイツでは米軍機はドイツの国内法に準じる形で運用されている。またイタリアでは米軍機による事故を機に、米軍機の低空飛行訓練は事実上禁止された。日本と同じ米軍が駐留する国々ともこれほど違っている。
 翻って日本。住民はいまも米軍機の騒音被害を受け、明日かもしれない墜落におびえて暮らしている。そして、それを許し続けているのは政治家であり、官僚であり、メディアではないか。
 オスプレイ配備と低空飛行訓練。その両者から見えてくるのは、米国に隷属する日本の姿にほかならない。(那)


【写真説明】本土初訓練で高知県上空を飛ぶオスプレイ(高知県大豊町、3月6日撮影=中西三男さん提供)