今週のひと言

希望をつなぐ判決

 「たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている」―。関西電力大飯原子力発電所3、4号機の運転差し止めを命じた5月21日の福井地裁判決の一節だ。従来の原発訴訟では、原発の立地手続きが適正だったかどうかを主に判断し、安全面に踏み込むことは避けるのが常だった。だが、樋口英明裁判長ら福井地裁の裁判官は、東京電力福島第一原発事故に正面から向き合った。そのことは、次の記述に言い表されている。「原子力発電技術の危険性の本質及びそのもたらす被害の大きさは、福島原発事故を通じて十分に明らかになったといえる」「かような事態を招く具体的危険性が万が一でもあるのかが判断の対象とされるべきであり、福島原発事故の後において、この判断を避けることは裁判所に課された最も重要な責務を放棄するに等しいものと考えられる」。判決を通じて語られているのは、血の通った、人間重視の考え方だ。文体もみずみずしい。司法の中に変化が起きつつあることを感じさせる。判決の要旨全文はネット上のサイトNPJに公開されている。SNSを通じてネット上で拡散され、フェイスブックの「いいね」は2万超。今からでも、さらに多くの人に読まれてほしい。関西電力の控訴で裁判は続くが、希望はつながる。

※参考
NPJ訟廷日誌「【速報】大飯原発運転差止請求事件判決要旨全文を掲載します」
http://www.news-pj.net/diary/1001