現場から:諏訪発

【諏訪発】誰が「集会」を判断するのか

 取材現場で、憲法が保障する「表現の自由」に、一定の制限を加える自民党改憲草案に懸念を示す意見をよく耳にする。長野県の中部、諏訪市で古書店を営む山崎秀訓さん(71)もそんな一人だ。
 「以前は政治や市民活動に縁遠かった」という山崎さん。昨年6月、当時の民主党政権が関西電力大飯原発(福井県)の再稼働を決めたことに矛盾や憤りを感じ、同7月、都内で開かれた再稼働に抗議する「10万人集会」に参加した。地元に帰り、近所の駅前で毎週金曜日の夕方、マイクを握って通行人に脱原発を訴える抗議行動を始めた。
 「署に来て下さい」
 抗議行動を始めて1週間ほどがたったある日、地元の諏訪警察署警備課から山崎さんに電話があった。恐る恐る出向くと、同署員から「山崎さんたちの抗議行動は県公安条例が定める『集会』に当たる可能性がありますね。集会届を出して下さい」と言われた。
 山崎さんは「10人くらいしか来ていない」「あくまで自主的な集まりだ」と主張した。その日は申請不要で済んだが、山崎さんたちの抗議行動は少しずつ人数が増えた。同9月、地元の新聞に、山崎さんたちの抗議行動に「30人ほどが参加」「シュプレヒコールを上げた」と伝える記事が載ると、再び同署に呼び出された。
 署員は「30人は多いですね」「シュプレヒコールを上げると集会でしょう」などと迫った。山崎さんは、数万人が集まった官邸前抗議行動でも、主催者団体は警視庁に集会届を出していないことを例示した。しかし、署員は納得せず、「事を荒立てたくない」と山崎さんはしぶしぶ集会届を出すことにした。
 長野県警警備2課によると、同条例には参加人数や「シュプレヒコールの有無」など、何を「集会」だと定めるか具体的な基準はなく、山崎さんたちの抗議行動は「総合的に『集会』だと判断した」という。
 「法や条例を運用する権力者側の判断で、物事のとらえ方が大きく変わる」
 山崎さんの目には、県警や警視庁の判断がそんな風に映る。山崎さんは集会届の提出と受け取りで、週2回の諏訪署通いを続けている。
 自民党は改憲草案21条の2で、「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動は認められない」と定めた。公益とは何か、公の秩序とは誰が決めるのか?。原発推進姿勢を見せ始めた与党・自民党とは相いれない脱原発抗議行動は、時の政府が「公益を害する」と判断するのではないか? そんな不安にさいなまれながら、山崎さんたちは今も抗議行動を続けている。(容)