ニュースと論評:憲法をめぐる動き

<JCJ緊急アピール>憲法の危機に、憲法を守り活かす勢力の前進を2012年12月総選挙に当たって、国民に訴える

 2012年12月16日に投開票される衆議院総選挙に関し、私たち日本ジャーナリスト会議は、この選挙の真の争点が日本国憲法にあることを改めて確認し、憲法に基づく政治の実現を目指す勢力が前進するよう、主権者である国民の皆さんに訴える。
 今回の選挙について、マスメディアの多くは、民主党と自民・公明、それに「第3極」と称するいくつかの保守政党をベースに選挙を描き出している。そこでは、消費税増税と社会保障、原発政策やTPP参加、近隣諸国との領土問題などが争点だとしている。また、全県挙げた沖縄のオスプレイ反対・基地撤去の声は無視に近い状態である。
 これらはいずれも日本の将来に関わる重要な問題である。しかし私たちは、その全ての根幹が日本国憲法にあること、そして今回の総選挙の結果によっては、戦後日本を形作ってきた憲法とその精神を捨て去り、再び戦争をする国に進む危険をはらんでいることを改めて指摘せざるを得ない。問われているのは、改憲勢力が議席を伸ばすのか、それとも改憲に反対し、憲法に基づく政治を目指す勢力が前進するか、である。
 まず、「日本国憲法改正草案」を公表した自民党は、総選挙公約で憲法改正をめざすとし、自衛隊を国防軍にし、集団的自衛権の行使を明確化する「国家安全保障基本法」制定を掲げた。安倍晋三総裁は、戦争を前提として「交戦規定の整備」まで主張している。さらに、「憲法破棄」を唱える石原慎太郎前東京都知事や、「自主憲法大綱案」を掲げる「たちあがれ日本」、「維新八策」で改憲を含む統治機構改革を主張する橋下徹大阪市長らが合流した「日本維新の会」の選挙公約には、「自主憲法の制定」が盛り込まれた。
 民主党も「専守防衛」に代えて「動的防衛力」を唱え、日米同盟の深化と日米軍事一体化を進め、集団的自衛権解釈の変更を打ち出している。さらに、「安全保障基本法」を唱える日本未来の党、「憲法改正の考え方」を持つみんなの党、「加憲」を主張する公明党も含め、今回の総選挙では、改憲を明確に掲げる政党の動きが際立っている。これらの政党が衆議院の多数、特に3分の2の議席を獲得すれば、改憲策動がさらに進む危険は明白だ。表現の自由と知る権利に関わる「秘密保全法案」の浮上も現実味を増してくる。
 かつて日本のメディアは、暴走する軍と「新体制」を唱える政治を押しとどめず、むしろそれを煽り、侵略戦争を推し進めた痛恨の歴史を持っている。日本国憲法は、戦争の惨禍と、2000万の人々の犠牲で生まれた、世界と歴史に対する約束でもある。
 ところが、マスメディアの今回の選挙報道は、こうした憲法の精神に立って政策を論じ、この憲法の危機を伝えるのではなく、「第3極」と称する政党の派手な動きや、すぐに政権に関わらない政党は意味がないかのような「政権の枠組み」報道に終始し、加えて自らによる世論調査で、「勝ち馬」意識を煽るバンドワゴン効果を広げようとしている。
 かつての侵略戦争への反省から生まれた、私たち日本ジャーナリスト会議は、日本国憲法の危機を示す総選挙にあたり、マスメディアが日本国憲法の精神に立ち返り、将来を見通した鋭い批評精神を発揮し、国民の道しるべとなることを改めて強く要請するとともに、主権者である国民がその投票行動で、憲法改悪をもくろむ勢力に厳しい審判を下し、憲法を守り生かす勢力の前進を促すよう、こころから訴えるものである。
 私たちはいま、歴史の岐路に立っている。

 2012年12月8日 真珠湾攻撃の71年の日に
     日本ジャーナリスト会議

JCJ緊急アピール(JCJ20121208.pdf)