ご意見紹介:ニュースと論評

【ご意見紹介】開かれたNHKをめざして

要 望 書

NHK会長 福地茂雄殿

理 事 各位

2009年7月7日

開かれたNHKをめざす全国連絡会

 (世話人)

松田 浩(メディア研究者・元立命館大学教授)
醍醐 聰(NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ共同代表・東大教授)
岩崎 貞明(放送レポート編集長)
隅井 孝雄(メディア研究者・京都ノートルダム女子大学客員教授)

(参加団体)

NHK問題大阪連絡会
NHK問題京都連絡会
NHK問題を考える会(兵庫)
NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
放送を語る会

 福地会長以下、NHK執行部の皆様には、日頃、よりよい公共放送実現のためにご努力いただき深く敬意を表します。

 さる4月5日に放送されたNHKスペシャル「アジアの?一等国?」について、放送後、さまざまな反響が寄せられています。同番組は近代日本の足跡を検証し、その教訓をもとにアジアの人々と今後どう向き合っていけばよいかを真面目に追求しようとした「シリーズJAPANデビュー」の第一回放送分です。戦前の日本における最初の植民地「台湾統治」の知られざる実相に、貴重な第一次資料と証言を通じて迫ったこの労作は、見るものに深い感銘を与え、多くの視聴者から高い評価が寄せられています。

 近年、歪んだ歴史観のもと戦前の侵略の歴史を美化し、それを直視しようとする人々に「反日」のレッテルを貼って攻撃を加える偏頗なナショナリズムが横行しているなかで、歴史の真実を掘り起こし、その共通認識のうえに、かつて侵略の歴史の被害者だったアジアの人々との友好の関係を築くことをめざした同シリーズは、まさに公共放送ならではの優れた取り組みであり、高く評価されてしかるべきだと、私たちは考えます。

 しかし、一方で、この番組に対し、一部の政治家や勢力から「内容が偏っている」「事実の誤りがある」などの激しい非難攻撃が浴びせられ、街宣車を先頭に「NHK解体」を叫んで番組担当者の謝罪・辞任やシリーズ自体の放送中止を迫ったり、8000人余りの原告を募って集団訴訟を起こすなど威嚇的な動きが強まっていることを、私たちは決して見過ごすことができません。 

 現状がETV「問われる戦時性暴力」番組改変問題を生んだ8年前の構図と酷似していることも、気がかりなことの一つです。看過できないのは、本来、NHKの自主・自律を守る砦となるべき経営委員の小林英明委員までが、これらの政治的外圧と呼応するかのように、第1095回経営委員会においてこの番組の一部の表現を捉え、自らの独善的歴史認識に基づいて「放送法違反」と攻撃を加えていることです。この行為は、それ自体が放送法に抵触しており?批判?の域を超えて「放送の自由」への政治的圧力ともなっています。
 この発言にあたって、同委員が放送法の「(経営)委員は個別の番組について、第3条に抵触する行為をしてはならない」(第16条2の第2項)の解釈をねじ曲げ、経営委員は同禁止規定に拘束されることなく個別番組の制作・放送や編集について執行部を監督する権限を有するとの主張を展開していることも、見逃せません。これは同条項立法の趣旨を全否定するだけでなく、放送の「自律」をも脅かす行為です。

 私たちは、本日、経営委員会に「要望書」を提出して、こうした小林経営委員の一連の行為に抗議するとともに、経営委員会が高い見識をもって小林委員のこうした放送法逸脱の言動に対処し、政治的外圧に対しても、毅然たる態度で視聴者の代表、公共放送の「自主・自立」を守る?砦?として確かな役割を発揮するよう要望しました。
 NHKにとって、いまこそ公共放送の「自主・自立」と「自律」を守る正念場だと考えます。
 私たちは、会長以下、NHKを支える全役員の皆様方に、心からの激励のメッセージをお送りします。そして、皆様が小林委員の放送法逸脱の言動に毅然と対処され、政治的外圧に対しても「放送の自由」と民主主義の守り手として、また視聴者の公共放送として、立派に責務を果たされるよう強く要望するものです。