ニュースと論評:憲法メディアウォッチ

〈放送ウオッチ〉読売テレビ「今夜はシャンパリーノ」

 『今夜はシャンパリーノ』
 「憲法第9条」07年11月5日放送

 読売テレビ制作、日本テレビ系放送のバラエティ番組『今夜はシャンパリーノ』が憲法9条を特集した。この番組は、ときに社会的なテーマを取り上げ、それについてお笑いタレントが勉強した上で先生役を務め、タレントたちに講義を行うというユニークなスタイルの番組だ。この回の放送は憲法9条の問題を取り上げたが、視聴者を楽しませながら重要な論点をしっかりと提示した、深い内容を持った番組となった。
 今回、先生役を務めたタレントは、「ギター侍」で一世を風靡した波田陽区。波田は、金田一秀穂・杏林大学教授による憲法9条の現代語訳を紹介する。「日本人は平和が大好きで、決してほかの国と戦争をしたり、戦ったりしない」「そのために、軍隊を持たないし、戦争する権利も持たない」。幅広い視聴者を意識した、うまい意訳だ。もっとも、そのあとに出てきた「ギャル語訳」による憲法9条「ウチらね、まったりしてたいしぃ、平和がスキだからぁ、せんそーいらない」はやりすぎだと思うが。
 波田が紹介する朝日新聞の07年5月の世論調査は、「憲法9条は改正しないほうがよい」が49%、「改正したほうがよい」が33%だった。ここで番組司会の島田紳助が、「改正したほうがよいと言う人の中には、軍隊を持たないことをもっとはっきり書いたほうがいい、という人も入っている」と、的確な突っ込みをいれる。
 ここで生徒役のタレントたち(陣内智則・ユンソナ・斎藤洋介・真鍋かをり・出川哲朗・和希沙也)に護憲・改憲いずれの意見かを問うと、意見が半数ずつに分かれた。出川は「日本はアメリカに頼りすぎだから、自分の国は自分で守るべき」と言う。
 番組の中心部は波田による各政党代表者へのインタビューだ。自民党の谷垣偵一政調会長は、自民党の「新憲法草案」が自衛隊を「自衛軍」と表記していることについて「自衛隊を持てるとはっきりわかるように変える」「外国からは自衛隊も軍隊と見られている」と説明。波田の「集団的自衛権は?」という問いに「いままでは持てないという解釈だった」と、新憲法で集団的自衛権を行使することを示唆した。民主党の鳩山由紀夫幹事長も「自衛隊を認めるような形で9条2項を変えるべき」と、自民党同様の主張をする。波田がインド洋での給油活動について聞くと、鳩山は「違憲」と答えたが、民主党の小沢一郎党首が主張するISAFへの参加については「ありうる」と言う。波田が「海外で武力行使すれば給油より憲法違反では?」と鋭く切り込むと、鳩山は「国連決議の下なら、危険が高くてもやるべき」とよくわからない回答だった。
 公明党の太田昭宏代表は自衛隊合憲を書き加える「加憲」を説明。自民党の新憲法草案には反対を表明したが、インド洋での給油活動は武力行使でないからよいとする。波田の「インド洋で攻撃されたら?」の質問に「応戦しないで逃げればいい」と、無責任とも取れる回答だった。共産党の志位和夫委員長は「自衛隊は違憲」と明言して、軍縮に向かうべきだと主張する。ただ、現状では「共存はやむを得ない」という判断。これを受けた島田紳助が「禁煙したいと思いながらタバコを吸っている、ということ」と解説して笑いを取る。社民党の福島みずほ党首は「自衛隊が海外に行くのには反対」「災害救助隊、国境警備隊に変えるべき」と主張。国民新党の亀井静香代表代行は「だれでもわかるような条文にすべき」と改憲を主張するが「今の状況で自衛隊を海外に出すべきでない」とも言う。
 波田が今年の通常国会で改憲手続法(国民投票法)が成立したことも紹介すると、なんとスタジオのタレントは誰もそのことを知らないと言う。波田は最低投票率の定めがないことなど、改憲手続法の問題点を指摘する。その上でもう一度、タレントたちに改憲の是非を問うと、当初は改憲に挙げていた出川哲朗が「危ない気がしてきた」と護憲に回った。しかし、当初護憲だった真鍋かをりが改憲に挙げて、番組として政治的バランスに細かく配慮していたのは制作スタッフの努力を垣間見せた。
 番組では、波田の後見人として小沢隆一・慈恵医大教授が時おり補足説明をして視聴者の理解を助けていたし、報道番組の司会経験もある島田紳助も適切でわかりやすいフォローをしていたが、もっとも特筆すべきは波田陽区の優れたインタビューアーぶりだろう。各政党代表が主張することに対し、臆せずにポイントを突いた質問を重ねて先方をうならせていたのが印象的だった。
 憲法9条をめぐる論点がうまく集約され、適度にお笑いを交えた親しみやすい構成で、バラエティ番組でもこれだけのことができたという事実に、正直言って驚かされた。今後も好企画を期待したい。(放送レポート編集長 岩崎 貞明)