ニュースと論評:憲法をめぐる動き

民放労連「放送法改定案に反対する声明」

放送法改定案に反対する声明

2007年3月30日
日本民間放送労働組合連合会
中央執行委員会

 政府は放送法の改定案を今国会に提出する準備を進めている。改定案では、関西テレビの『発掘!あるある大事典?』の捏造問題を受けて、「虚偽の説明により事実でない事項を事実であると誤解させるような放送であって、国民経済又は国民生活に悪影響を及ぼし、又及ぼすおそれのあるもの」を放送した放送局に対して、総務大臣が「再発防止計画」の提出を求め、大臣の意見を付けて公表するという制度が新たに導入されている。
 確かに、実験データやインタビュー内容を捏造して放送した今回の事件が放送に対する信頼を失墜せしめ、社会から強く指弾されていることは紛れもない事実であり、放送局と番組制作者の責任は厳しく問われなければならない。しかし、今回の事件を契機に、行政機関が放送番組の内容に踏み込んで行政権限を行使し、強化しようとすることは、憲法・放送法が保障する表現の自由・番組編集の自由を守る立場から、決して容認することはできない。
改定案には、「虚偽の説明」や「事実でない事項」を判断する主体が行政当局になること、菅総務相の国会答弁によれば、対象となる番組がほとんどすべての番組に及び、放送法三条の二「報道は事実を曲げないですること」を大きく拡大解釈するものとなることなど、もっと慎重に検討されるべき問題が数多く残されている。さらに、「放送倫理・番組向上機構(BPO)」が今回打ち出した「放送倫理の確立と再発防止に関する委員会(仮称)」の新設など、放送界の自主的な取り組みをまったく無視していることにも、強い疑問を抱かざるをえない。放送上で発生した問題は、第一に視聴者と放送局の関係のなかで自律的に解決されるべきである。行政機関が免許権限を背景に強権的に放送内容に介入することは、公権力から完全に独立した存在として、国民の知る権利に奉仕すべき放送局の使命を根本的に脅かすことにつながりかねない。

 また改定案では、複数の放送局を支配できる「認定放送持株会社」制度を導入するとしている。
日本の放送制度は、特定の資本が複数の放送局を支配することを規制した「マスメディア集中排除原則」を放送局開設の根本的基準としている。これは民主主義社会の基盤を支える情報・意見の多様性・多元性・地域性を確保する目的で設けられた規律であるはずだ。改定案のように特定資本が多数の放送局を支配下に置くことを容認することは、この原則をないがしろにして巨大資本によるメディアの寡占化を推進するもので、少数意見や多様な意見の表出の機会が奪われ、言論・表現の自由を著しく損なう危険性をはらんでいる。今回の「放送持株会社」制度導入の論議は市場原理による規制緩和の流れに沿ってなされており、放送の公共性や戦後の放送制度を支えてきた県域免許原則に与える影響などの検討が十分になされていない。

 私たちは、言論・表現の自由を危うくし、その多様性を失わせる今回の放送法改定に強く反対し、その撤回を求めるものである。

以 上