ニュースと論評:憲法をめぐる動き

憲法改定のための「国民投票法案」に反対する民放労連の見解

民放労連は10月6日、下記の通り、憲法改定のための「国民投票法案」に反対する民放労連の見解を発表しました。

2006年5月26日、自民・公明の与党と民主党はそれぞれ日本国憲法の改定手続きに関する「国民投票法案」を衆議院に提出、現在、両法案は継続審議となっている。

『普通の国になろう』という耳あたりの良い言葉の陰で、自衛の名の下に同盟国と一緒に侵略戦争さえできる国にしかねない憲法改定を意図しながら、そのための手続きを定めようとするこれらの法案は、今の日本にとって緊急の必要に迫られたものとは到底思えない。両法案は憲法改定のための調査を行い、改憲の原案を提出できる「憲法審査会」を設置するとしており、法案成立と同時に憲法改定の具体的な手続きに入ることを可能にする、改憲手続き始動法案と言わざるを得ない。

 とくに、提出された両法案には共通して、放送倫理や表現の自由の観点から私たち放送労働者が容認できない、以下のような重大な問題点が存在する。

? 広報協議会の構成について
憲法96条の定めにより、衆参両院議員の三分の二以上の賛成をもって憲法改定の発議が行われたとき、その改定案の内容を国民に周知させるため、「国民投票法案」の与党案では「憲法改正案広報協議会」、民主党案では「国民投票広報協議会」を設置することとしている。これら「広報協議会」の委員の構成は、いずれも国会の各会派の所属議員数を踏まえて各会派に割り当てられるとされているが、国会が憲法改定の発議を行うということは、憲法改定に賛成する議員が両院で三分の二以上を占めていることを意味するから、広報協議会の構成も憲法改定に賛成する議員が三分の二以上を占めることになる。そのような広報協議会によって行われる憲法改定案の広報は、憲法改定に賛成することを強調するものとなることが避けられず、反対派の意見が十分に反映されなくなる危険性が高い。
広報協議会は憲法改定に賛成・反対の意見を「公正かつ平等に扱うものとする」といずれの法案にも記載はあるものの、これで広報の公正性が担保されるとはとても考えられない。そもそも、国のあり方にかかわる重要な問題については、多様な言論、表現がなされてしかるべきであるのに、国会議員のみによって構成される「広報協議会」という単一の組織による広報活動は、国会議員が自らの発議した改定案を主権者たる国民に押し付けることになりはしないだろうか。

?放送を利用した無料広告について
 両法案では、政党等が新聞とともにラジオ・テレビのCMなどを利用して無料で、即ち国費によって広報活動ができるように定められている。しかしここでも、CMの放送時間等については各会派の所属議員数を踏まえて広報協議会が定めるものとされている。これでは、前記と同様の理由で、憲法改定に賛成する内容のCMが、反対する内容のCMより圧倒的に長時間、多数回にわたって放送されることになる。憲法改定に賛成・反対の意見を国民が平等に受け取るためには、それらの意見が同等の時間、回数で放送されるようなルール作りが最低限必要であろう。また、この無料広告を利用できるのが「政党等」に限定されていることも、主権者たる国民の表現の自由、広告の自由の観点から重大な問題をはらんでいる。

?広告の放送規制について
 両法案とも、国民投票の七日前からは、政党等による無料広告を除いて、テレビやラジオを利用した広告・広報活動を禁止している。政党等の広報活動ばかりを重視して、市民や民間団体などによる表現行為を制限するこの規定は、国民の知る権利や表現の自由を著しく侵害するもので、憲法違反と言うべきである。
 一方で、有料の広告活動について両法案とも何ら言及していない点にも懸念を抱く。大きな経済力をもつ者は、大量のCM放送枠を買い占めて一方的な宣伝活動を行うことが可能であり、そうすると放送法三条の二が求める「政治的に公平であること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に抵触する状態を招きかねない。社会的強者が、大量にイメージ広告を打って情報操作するための道具として放送を利用することは、国民の共有財産である放送波を私物化するもので、断じて許されない。国民各層が平等に放送を利用できるようなルール作りを、慎重に進める必要がある。

このほか、発議から投票までの周知期間が短すぎること、公務員や教職員の「国民投票運動」が与党案では厳しく制限されていること、投票の方式や投票数の数え方の問題など、「国民投票法案」が重大な問題を抱えていることが各方面から指摘されている。このように多くの問題があり、さまざまに批判の強い法案を国会で審議しようとすること自体に、私たちは強く異を唱えたい。
日本国憲法が第21条において表現の自由を保障しているのは、国民が言論・表現活動を通じて政治的意思決定に参加し、民主主義による政治を維持、発展させていくことを期待してのことである。そのためには多様な言論・表現が国民によっておこなわれ、受け取られる必要がある。国民の知る権利や表現の自由を侵害し、放送の公共性を危うくするおそれの強い今回の「国民投票法案」は、ただちに廃案にすべきだと私たちは考える。
この法案が十分な議論がないまま可決・成立し、「憲法改悪」への道を開くようなことは断じて許されてはならない。                           以 上