今週のひと言

ヘイトスピーチと司法の役割

 書き留めておきたい司法判断がある。京都市の朝鮮学校の周辺で示威活動を行い、差別的な発言を繰り返したとして、学校側が「在日特権を許さない市民の会」(在特会)などを提訴した訴訟の判決で京都地裁は10月7日、学校周辺での活動の禁止と1200万円の賠償を命じた。判決は「示威活動が行われた経緯や、朝鮮学校を『日本からたたき出せ』『ぶっ壊せ』と言い、在日朝鮮人を『ゴキブリ』『ウジ虫』と呼ぶ発言内容に照らせば、在日朝鮮人に対する差別意識を世間に訴える意図」があったのは明らかと指摘し、日本も批准している人種差別撤廃条約が禁止している人種差別に当たると明快に断じた。
 いわゆる「ヘイトスピーチ」をめぐる初の司法判断とみられるが、橋詰均裁判長ら裁判官たちの真骨頂は、賠償の判断に表れている。判決は「人種差別となる行為が損害を発生させている場合、裁判所は条約上の責務に基づき賠償額の認定を行うべきと解される。賠償額は人種差別行為に対する効果的な保護および救済措置となるような額を定めなければならず、本件の場合、高額なものとならざるを得ない」としている。ヘイトスピーチを直接取り締まる法律が日本にない中で、裁判所が果たすべき役割を明確に自覚している。
 在特会側は判決を不服として控訴した。引き続き大阪高裁で審理が続くが、この京都地裁判決が確定すれば、表現の自由と衝突する恐れが指摘される直接の法規制に頼らずとも、ヘイトスピーチをなくす方途をわたしたちの社会は手にすることができるかもしれない。そうなることを期待したい。