今週のひと言

「決めさせない」ことの大切さ

 憲法学者や政治学者らが23日、「96条の会」を結成した。印象的だったのは、憲法学界の重鎮で護憲派の樋口陽一・東大名誉教授と改憲派の論客で知られる小林節・慶応大教授がそろって記者会見に臨んだことだ。自民党や日本維新の会、みんなの党が進めようとする憲法96条の改正が、権力を制限するという立憲主義の枠組みを破壊してしまうという危機感が会の結成につながった。「憲法に縛られるべき権力者たちが国民を利用し、憲法をとりあげようとしている」(小林氏)という、戦後初めて経験する時代を私たちは生きている。
 危うい時代の空気は、衆参のねじれの中で「決められない政治」を批判し、「決められる政治」の実現を主張した政治家やマスコミの論調とも共鳴している。従軍慰安婦・風俗発言で女性の人権を踏みにじり、迷走を続ける日本維新の会の共同代表、橋下徹・大阪市長の政治手法が一時期喝采を集めたのも、閉塞感が漂う中で人々のやり場のない怒りをうまく吸収したのだろう。
 樋口氏が新著「いま、『憲法改正』をどう考えるか」(岩波書店)で、「決める政治」に流されず、改憲を「決めさせない」ことの大切さを説いている。「『決められる政治』の掛け声のもとで何が決められようとしているか、改めて見定めなくてはならぬ」。自衛隊を国防軍に変え、公益・公の秩序の下で表現の自由を制限し、国民にも憲法尊重擁護義務を負わせようとする逆立ちした発想の自民党の憲法改正草案をみれば、権力者が何を決めようとしたいのかは明らかだろう。
 流れのまま「決められる政治」に乗った時の危うさは、橋下氏がいま、国民の目の前でわかりやすく示してくれている。