今週のひと言

ジャーナリストの死を政治利用させてはいけない

 「イスラム国」に拘束されていた2人の日本人の殺害映像が、相次いでネットに流れた。残念の一言に尽きる。2月1日(日本時間)に映像が流れた後藤健二さんはジャーナリストだった。イスラム国は後藤さんの以前にも、米国人ジャーナリストを殺害している。イスラム国の出現によって何が起きているかを取材しに現地に入ったジャーナリストが拘束され、殺害される。そのために私たちは、イスラム国が何者であるかを知ることが一層困難になる。結果として、理解不能な「モンスター」のイメージだけが肥大化する。人質殺害は決して許されないが、なぜモンスターが生まれたのかを顧みることなく、報復が声高に叫ばれるのだとしたら、憎しみの連鎖は断ち切れない。後藤さんらジャーナリストの殺害は二重の意味でショックだし、最大級の非難に値する。
 日本では自民党の高村正彦副総裁が後藤さんの行動を「蛮勇」と評するなど、またぞろ自己責任論が出ている。しかし、現地で取材するジャーナリストがいるからこそ、わたしたちは多様な情報に接することができる。「危険だから行かない」という選択肢だけでなく、「備えをしっかりして危険を減らし、現地入りを模索する」という選択肢も支持したい。今は、後藤さんは自分の目で見たことを、わたしたちの社会に伝えようとしていたのだろうということに思いをはせ、ご冥福を祈りたい。
 許しがたいのは、後藤さんらの死を安倍晋三首相が政治利用しようとしていることだ。2月3日の参院予算委の質疑で安倍氏は、今回の事件に関連して「自民党は既に9条の改正案を示している。なぜ改正するかと言えば、国民の生命と財産を守る任務を全うするためだ」と述べた。言語道断。安倍氏が今やるべきは、後藤さんらの救出に手を尽くしたのかを検証し、公表することだ。