今週のひと言

「高揚感」に満ちた施政方針演説

 あの演説を「高揚感に満ちていた」(朝日社説)というのだろうか。
 安倍首相の施政方針演説は、吉田松陰、岩倉具視、岡倉天心と幕末から明治の人物を引き、「改革」を36回も連呼、「戦後以来の大改革」をぶち上げた。テレビで聞いた感じでは、えらく扇情的で、まるでアジ演説のようで、ちょっと異常だったが、各紙の評価は「具体的な成果を出すことが従来以上に求められる」(読売)、「戦後以来の大改革」は、「きのうの演説を聴く限りでは、その最終的な狙いについては不透明なままだ」(朝日)といったものだった。
 それもそのはず、「あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする安全保障法制の整備を進める」「テロと戦う国際社会で責任を毅然として果たす」と宣言し、「憲法改正に向けた国民的な議論を深めていこう」と勇ましく訴えながら、一方ではそれ以上語らず、「集団的自衛権首相語らず」(東京)、「安保法制踏み込まず」(毎日)と解釈され、産経新聞には「演説が踏み込み不足だった点は否めない」と指摘されるような姿勢だったからだ。
 しかし、そういう理解でいいのだろうか。「戦後以来の大改革」は首相が言ってきた「戦後レジームからの脱却」だが、今回特に選挙結果について「『安定した政治の下で、この道をさらに力強く前進せよ』。これが総選挙で示された国民の意思」と開き直って、「憲法改正」までテーブルに載せる意思を示したことに対しては、もっと強い異議申し立てが出されてしかるべきではなかったか。
 安倍内閣は、おととしの参院選前に、96条改憲先行に挫折して以来、解釈改憲を前面に出して、集団的自衛権行使容認などに踏み出したが、次の参院選では明文改憲をテーマにする姿勢を打ち出している。「国会」や「野党」以前に、問題提起するメディアの役割は大きいはずだ。