今週のひと言

「論点明示報道」の重要性

 戦争法の国会審議が始まった。何を聞かれても、まともに答えず、決まった文章を繰り返すだけ。議論は全く進まない。しかしそれでも、野党の質問に支離滅裂になっている安倍政権の状況を国民に伝え、いま何が重要かを伝えるのは、マスメディアの仕事だ。
 始まった委員会審議を伝える5月28日付の在京各紙は、日経、産経を除いてみんな1面トップだった。
 「後方支援範囲限定へ 『戦闘ないと見込まれる場所』 首相答弁」(読売)、「首相『専守防衛は不変』集団的自衛権の行使」(毎日)、「武力行使の『例外』拡大 他国領域 米艦防護・機雷除去 首相ら見解」(朝日)、「『他国で戦わず』崩れる 機雷掃海さらに 米艦防護 敵基地攻撃 安保法案審議 首相ら否定せず」(東京)―。
 1面で見ると、ほかに、朝日は「次々『例外』歯止めどこに」とする「視点」、東京は「派兵例外でなく原則」の見出しの「柳沢恭二氏の安保国会ウオッチ」を掲載した。
 比較してみると、何が問題なのかが、明らかなのは、やっぱり東京の「『他国で戦わず』崩れる」だろう。朝日は首相の「例外」論を伝えたが、その是非については「視点」に譲った。毎日は「専守防衛は不変」という首相のウソをそのまま報じたことになる。
 東京新聞は、ここ数年、原発、秘密保護法、そして安保と続く安倍政治に、「論点明示報道」を打ち出して成功を収めている。政府の発言を本記として報じ、それに対する異論も紹介するという従来のニュースの構成から発想を変え、「何が大切か」を前面に出して本記を書き、それに対する政府の見解も書くという方法。昨年夏、「JCJ大賞」が贈られたのは、それがジャーナリズムの本来の在り方だからだ。
 事実上の審議拒否、論理不在、言葉を勝手に使ってごまかすという政権の姿勢は、これまでの政権にないほどだ。それに、どう対応するのか。それなら、なおのこと、政府の発言を流すより先に、何が論点かはっきりさせ、批判的に報じる姿勢が大切だ。「どうせ、最後は強行採決だから、それなら政府の見解を流す方が実質的」という従来方式の政治報道は、ジャーナリズムの放棄である。