今週のひと言

復古の始まり

 衆院の憲法審査会が3月14日、安倍政権下発足後初めての討論を行った。総選挙での公約に「国防軍の設置」を掲げた自民党。さっそく中谷元氏が国防軍を明記するよう主張すると、日本維新の会とみんなの党がこれに歩調を合わせた。先立つ天皇条項をめぐる議論でも、この3党が天皇を「元首」と位置づけるために憲法改正が必要だと訴えた。
 国防軍もさることながら、天皇の元首化が今の時代に議論されようとは。タイムスリップした気分になった。日本が独立を回復した1950年代前半、戦前回帰の機運とともに「天皇の元首化」が論点として浮上してくる。保守合同前年の54年、当時の改進党と自由党が相次いで改憲案を発表し、天皇を元首とするように訴えたことがあった。
 60年代、内閣の下にできた憲法調査会でも天皇を元首として明記すべきかどうかをめぐり激論が交わされ、弁護士で最高裁判事を務めた故・真野毅氏が反対論をぶった。「天皇を非政治的な立場に置くことが天皇制の安泰を長く維持できるゆえんだ。これを政治的権力の立場に置きかえ、その方向に少しでも近づけることは、過去の天皇制利用の弊害を経験した我々としてはあくまで反対。『帽子は大事なものだが軽いほうがよい』というのが私の感覚だ」
 象徴天皇制が誕生してすでに60余年。真野氏の感覚は多くの人々に共有されているのではないのか。あえて天皇を元首と位置づけようとする政治的意図は何なのか。そういえば、日本維新の会の英語名は「Japan Restoration Party」。直訳すれば「日本復古党」。国内のブログやツイッターでも、「大日本帝国復活かあ……」などと話題になった。ただの冗談と思いたいが、冗談ではすまなそうな現実が始まりつつある。