今週のひと言

憲法の本質を変える96条改正

 「戦後レジームからの脱却」が持論で、憲法改正に執念を燃やす安倍晋三首相が再登板した。自民党は衆院選の公約で、国防軍の設置や教科書検定の近隣諸国条項の見直しを掲げるなどタカ派色を前面に打ち出している。圧勝を決めた衆院選翌日の17日、記者会見に臨んだ安倍氏は、憲法改正を進めるためにまず、改憲の発議要件を国会議員の3分の2以上と定めた憲法96条の改正に着手する方針を明らかにした。
 国内外の主なメディアは、右傾化の象徴として国防軍や集団的自衛権の問題などはとりあげるが、96条改正が持つ問題の本質を十分に伝えきれていない。
 憲法とは何かを改めて確認しておきたい。それは権力を制限する規範であり、多数者によっても奪えない個人の自由や権利を守ることを柱とする法だ。改正要件が厳しいのは、憲法自身の性格による。
 つまり、改正の要件を緩めるということは、時の多数派にとって都合のいい改憲案が提案しやすくなるということを意味する。それは、権力を縛るという憲法の性質そのものを変えてしまう極めて危険な試みなのだ。最後に国民投票があるとはいえ、いったんハードルを下げてしまえば、「何でもあり」の世界が生まれかねない。
 自民党は1955年、自主憲法制定を党是に掲げて誕生した。以来57年。戦争放棄と戦力の不保持を定めた憲法9条は絶えず論争の的にさらされてきたが、結果的に日本人はそれを守り続けてきた。平和国家で生きていくという民意の支えがあったと同時に、96条という憲法が自ら課したハードルがあったことを私たちは忘れてはならない。