今週のひと言

「12月8日」は何の日か

 今年の12月8日は、1941年の太平洋戦争開戦から75年だった。その直前に、安倍晋三首相の米ハワイ・真珠湾訪問が発表されたためか、例年にも増して「12月8日」が注目されている。真珠湾は日本海軍が空母機動部隊による奇襲攻撃で米海軍に先制の第一撃を放った場所。米国ではひきょうな不意打ちとして「リメンバー・パールハーバー」が合い言葉になった。その場所を、安倍首相が戦没者の慰霊のために、オバマ米大統領と訪れるという。意義があることではあろうが、一方で気にかかることがある。日本のマスメディアでは「太平洋戦争開戦=真珠湾攻撃」とする捉え方があまりにも目立つのだ。
 史実で言えば、真珠湾への第一弾投下より1時間余り前に、日本陸軍はマレー半島北部への上陸作戦を開始した。翌年1月にかけて日本軍は英軍を撃破しながらマレー半島を南下し、2月15日にシンガポールの英軍守備隊が降伏する。日本の占領期にシンガポールやマレー各地では、華僑系住民がスパイの嫌疑で処刑されるといった例が数多くあった。当時、日本が中国でも戦争を継続していたことと関連があったはずだ。
 そもそも太平洋戦争は米国との戦争それ自体が目的ではなく、「蘭印=オランダ領インドシナ=今日のインドネシア」の油田地帯の確保が大きな目的だった。中国との戦争に米国が強硬姿勢を示し、当時、日本が米国に依存していた石油輸入を止められたことも、開戦の要因にはある。「12月8日」を今日振り返る時には、中国との戦争に始まる前段の経緯や、真珠湾攻撃だけではない陸軍の作戦にも目を向けないと、75年後のこの日の意義を一面的にしかとらえられなくなるのではないか。
 このままでは、12月26、27日の安倍晋三首相のハワイ訪問と真珠湾での慰霊の際に、今日の日米軍事同盟の意義が高らかに喧伝されるような報道ばかりが目立つようになりかねない。