お薦め本紹介

お薦め本紹介(2017年6月)

お薦め本紹介(2017年6月)
・誤解だらけの沖縄基地
・私の沖縄現代史
・風かたか
・キューバ現代史
・裁判の非情と人情
・消費税は下げられる!

これってホント!? 誤解だらけの沖縄基地

沖縄タイムス編集局 編
誤解だらけの沖縄基地
沖縄の現実から目をそらし 基地撤去の願いに背く風潮を問う
 「広辞苑」によると「誤解」とは、意味をとり違えること、間違った理解をすること-と定義されている。日々の生活に米軍基地が関わり合う沖縄の人々に対し、単に誤解で済ませてよい問題だろうか。読み進むうちにそんな気持ちになってきた。
 本書は昨年1月から8月まで沖縄タイムスで連載された「誤解だらけの沖縄基地」をベースに再構成し加筆したものだ。文章は平易で図表なども多く、基地問題は苦手な人でも読みやすい。
 ネットや口コミで流される各種の誤解を「在日米軍」「基地経済」「普天間」「海兵隊の抑止力」などにジャンル分け。「地理的に重要だから沖縄に海兵隊を置くのか?」「日本防衛の義務、在日米軍にあるのか?」「基地がなければ沖縄経済は破綻?」などの質問に、公表された統計データや史実を基に丁寧に反証する。
 ところでこれらの「誤解」は、どこから生まれるのか。沖縄に行った経験がない人でも、沖縄に米軍基地が集中し犯罪や騒音などで沖縄県民が苦しんでいる現状は知っているはずだ。そして日米安全保障条約に基づく日米同盟のため在日米軍基地が不可欠なことも。
 だから国民も自分の近くに米軍基地が来ないよう沖縄の現実から目をそらし、話題にするのを避けているように思う。
 本土メディアにも責任はないのか。「辺野古移設が唯一の解決策」を固持する日本政府の方針も広い意味では「誤解」だ。辺野古の新基地建設に根強く反対する沖縄の人々の視点に立ち解決策を探る報道がもっと多くあってもよい。
(高文研1700円)

川村史子(JCJ北海道支部)

私の沖縄現代史 米軍支配時代を日本〈ヤマト〉で生きて

新崎盛暉
私の沖縄現代史
沖縄の復帰運動は人間解放の闘い 散逸資料を収集し記録に残す
 沖縄戦後史の研究と社会運動のリーダーとして活躍してきた新崎さんが、初めて自分の生き方と沖縄現代史のかかわりを語った。今回は、沖縄戦から27年間の過酷な米軍統治を経て日本復帰(沖縄返還)に至る時代をまとめた。
 沖縄出身の両親のもとで東京に生まれた。人生の転機となったのは都立高校入学後の4月28日。校長が全校生徒を集め、講和条約と「独立」を祝って万歳三唱をした。新崎さんは沖縄を半永久的に米軍支配下に放置する独立の日に大きな衝撃を受ける。〈ヤマト〉に拠点を置いて、沖縄に関わり続けて生きることを決意する。
 拠点にしたのは、中野好夫氏が主宰する「沖縄資料センター」。今日と比べ、沖縄現地の情報が地元紙以外ほとんどない。新崎さんは都庁に勤務しながら、沖縄に関する資料収集と情報発信の「ニュース」発行を続けた。その蓄積が、1300頁にのぼる『沖縄問題基本資料集』(南方同朋援護会、68年)や新崎さん提唱の新しい時期区分にそった『戦後資料 沖縄』(日本評論社、69年)などの基本文献の整備に結実。
 ベトナム戦争の激化と沖縄の拠点化はB52撤去や日本復帰のたたかいを広げた。新崎さんは「世界」「現代の眼」などでルポ、論評、解説を書き、復帰運動の方向を提起してきた。その根底に、復帰運動は権利闘争や平和運動と実質的に結びついている人間解放運動であるという洞察があったことも、銘記しておきたい。
 この後、新崎さんは沖縄に移住し活躍することになる。続編が待たれる。
(岩波現代文庫980円)

菅原正伯

風(かじ)かたか

「標的の島」撮影記
三上智恵
風かたか
沖縄の島々を〝風よけ〟にするのは誰か
 私は長年、雑誌や書籍の編集という仕事をしてきた。だから、作家やジャーナリストなど物書きの方々の知人友人も多い。そういう方の本の書評を頼まれることもよくある。親しい人の本の書評は難しい。書きながら、著者の顔が浮かぶからだ。
 本書の著者とは、もう十年来の友人。だが本書の書評はまったく難しくない。とにかく素晴らしいのだから、素直に推奨すればいい。
 表題は、沖縄方言で「風よけ」のことをいう。誰のために、何から何を守るための風よけなのか。それが痛いほど伝わってくる。帯に「辺野古・高江・宮古・石垣―島々を“風よけ”にしようとするのは誰なのか?」とある。それが本書の叫びだ。
 著者は<標的の島>という優れたドキュメンタリー映画を撮りながら、ウェブ上の「マガジン9」に、リアルタイムの報告と現場の怒りの声を連載。それが本書となった。
 冒頭に掲げられる、まるで詩のような美しい文章に胸がつまる。「この本を辺野古の平和運動の象徴だった 嘉陽宗義さんに捧げます」とあるように、著者の心の支えでもあった、おじいへのオマージュ。それはまた、屈せぬ著者の決意の詩でもある。闘う人に著者の目はフォーカスされる。
 高江の大弾圧、辺野古での座り込み、宮古島要塞化計画、ヒロジさんや文子おばあの闘い、素知らぬ顔をし続ける本土、翁長知事の決意……そして「残酷な12月」の辺野古工事再開。
 どこを開いても、私は拳を握り締め、また沖縄へ行かなければ…と思うのだ。
(大月書店1500円)

鈴木耕(編集者)

キューバ現代史

革命から対米関係改善まで
後藤政子
キューバ現代史
「社会主義」キューバの歩み 原点にあるホセ・マルティの思想
 1959年、カリブ海の島国キューバで革命運動が勝利した。当初、社会主義をめざしたわけではない革命政府は、米国による反革命攻撃、経済的締め付け、ソ連の援助申し出などがあり、やがて社会主義を宣言する。
 米国フロリダからわずか145㎞の小国。米国の厳しい経済封鎖、絶え間ない政府転覆策謀や指導者フィデル・カストロの暗殺計画にもかかわらず、この国の「社会主義」が、半世紀を超えて生きながらえている謎に答えてくれるのが本書だ。
 キーポイントは「(19世紀末の独立運動の指導者)ホセ・マルティの思想」、「人間は自由な存在」であり「自由とは他者の自由の拡大」であり、独立後の社会は「すべての人びとの幸せ」「最も虐げられた人びとの解放が最優先」などを核とする思想が「キューバ革命の基本理念」にある。
 「貧困層の生活向上や黒人や女性の平等」「教育や医療の無償化」などが、革命後の政策に具体化されている。
 ソ連圏の崩壞によってキューバの社会主義は存亡の危機に直面するが、克服できたのは80年代を通して「社会主義見直し」運動による、という指摘は興味深い。
 20年の経験を総括し、キューバの特性・課題に適合した社会主義、マルティの人間主義的思想に、さらに近づく社会主義への道を、模索しはじめたのである。
 トランプ政権の誕生により米国との「正常化交渉」は不透明になったが、マルティ思想を活かしつつ経済的豊かさをも享受できる社会を目指すキューバ社会の動向は、人間社会全体にとっても重要な意味をもっていよう。本書は格好の教材だ。
(明石書店2800円)

吉原功(明治学院大学名誉教授)

裁判の非情と人情

原田國男
 有罪率99%といわれる日本の刑事裁判畑を長く歩む中で、20件余りの「逆転無罪判決」を下した元東京高裁判事の随筆集。「無罪の判決文を書くときは楽しくて仕方がない」など、洒脱な文章で人を裁く側の心理を綴る。思わず笑いを誘う法廷光景や被告人からの手紙など、豊富なエピソードが盛り込まれている。その行間から、現実の裁判の実態を垣間見ることができる。
 「裁判官は、多くの文芸作品や小説を読むべきである。裁判は人間を対象とする。いくら勉強ができて理論に詳しくとも、人間観察の力がないと、理屈だけの薄っぺらな裁判官になってしまう」。
 大きな事件の公判に臨むときなど、「周平と鬼平を糧に」してきたという筆者の言葉は重い。
 裁かれるのも「人」なら、裁くのも「人」。「いくら立派な判決を書けても、これ(世情と人情)に疎ければ、本当に良い判断とはいえない」と強調する。「こんな裁判官がいる限り、この国の法曹界を信じたい」。山田洋次監督の帯文が実感される1冊。
(岩波新書760円)

栩木誠

消費税は下げられる!

森永卓郎
 日本は財政危機で破綻寸前だという。これは消費税率を上げる財務省のプロパガンダ─と、著者は喝破する。
 日本政府の資産は930兆円。負債1370兆円。差し引き、借金440兆円。さらに日銀は民間銀行が持つ国債を買い続け、今や日銀の国債残高は440兆円。
 日銀と政府は一心同体、政府の借金は国債残高で相殺できる。よって日本政府の借金はゼロ。「日本の財政は、世界一健全」といえる。
 借金がないのに消費税を上げる理由はない。このチャンスにこそ、消費税を5%に下げて日本経済の好転を図るべきだと主張する。
 さらに現在30%の法人実効税率を50%まで戻せば税収は12・5兆円の増収となる。これだけで消費税を5%弱引き下げることが可能だ。
 また庶民が負担する税・社会保険料は収入の3割、富裕層は2割だ。応能負担にし、貯蓄や金融資産・タックスヘイブン資金への課税も強化する。こうした税制改革を実施すれば、「無税国家」の実現に近づく、とまで説く。
(角川新書800円)

萩山拓(ライター)