今週のひと言

読売新聞「出会い系バー通い」記事の異常さ

 これでは権力の「御用」と呼ばれても仕方がないのではないか。加計学園問題と前川喜平・前文部科学次官を巡る読売新聞の記事のことだ。
 安倍晋三首相の「腹心の友」とされる理事長が率いる学校法人の大学獣医学部新設を巡って、筋を曲げた便宜があったのではないか、との疑惑が取り沙汰される中で、内閣府から「総理の意向」として早期の開学を求められたことを記した文科省の内部文書が明るみに出た。菅義偉官房長官が「怪文書」などと否定に躍起になっているさなかの5月22日、読売新聞朝刊に社会面準トップで「前川前次官 出会い系バー通い/文科省在職中、平日夜」との記事が載った。売春や援助交際の交渉の場になっている店に頻繁に出入りしていることが分かったとして「教育行政のトップとして不適切な行動に対し、批判が上がりそうだ」と断じた。
 前次官は25日に会見し、文書が文科省に存在していたことを明言。読売も26日付朝刊1面で報じたが、社会面では会見記事の脇に「出会い系バー通い『実地調査』」の4段見出しを立て、女性の貧困問題に対する実地調査との前次官の説明を紹介しながら「店の関係者によると、前川氏は約2年前から頻繁に通い、女性と値段の交渉をして、店外に連れ出したこともあったが、昨年末頃から急に来店しなくなったという」と書き、教育評論家の「言い訳としてはあまりにもお粗末」とのコメントまで載せた。
 「出会い系バー通い」の情報源について、週刊誌などでは首相官邸サイドのリークだとの指摘が出ているが、真偽不明の情報を抜きに紙面だけを見ても、問題は大きい。記事は前次官が買春や援助交際を繰り返していたことを事実として指摘しているわけではないのに、何の値段かを明示せずに「値段の交渉をしていた」などの表現を盛り込んでおり、買春などの行為をしていたかの印象を読む者に与えかねない。前次官が会見で目的を説明してもなお、同じような記事を繰り返し載せた。そもそも刑事事件になる見通しもないのに、プライベートな時間の過ごし方を一方的に批判する記事をこんなに大きく扱うのは異常だ。
 結果として読売の記事によって、前次官は買春や援助交際の常習者だったと受け取る人がいれば、喜ぶのは誰だろうか。もしも、そうした「印象操作」が記事の狙いだとすれば「謀略」に等しい。
 もう一つ驚いたことに、前次官の会見で読売の記者は、前次官が文書の存在を明言したことに対し「守秘義務違反に当たらないかという指摘もされると思うんですけど」と質問したという。毎日新聞の与良正男専門編集委員が紙面のコラムで明らかにしている。与良氏も書いているように、それが公正な社会の実現のために必要なら、守秘義務の壁は乗り越えなければいけない。情報源を守りつつだ。それが記者の仕事のはずだ。