今週のひと言

危機を煽る政府に加担したメディア

 北朝鮮の弾道ミサイル発射のニュースで一色に染まった8月29日早朝のテレビ報道は、これから戦争でも始まるのか、と思わせるような中身だった。チャンネルを回すと、どの局もJアラートの静止画面。「頑丈な建物や地下に避難して下さい」とアナウンサーが政府の呼びかけをおうむ返しに繰り返していた。
 北朝鮮のミサイルが日本上空を通過するのは5回目で、今回が初めてではない。日本が標的にされたわけでもないし、被害が出たわけでもない。報道によると午前5時58分に発射され、14分後の午前6時12分に襟裳岬東約1180キロの太平洋上に落下した。一般の人々の感覚では、あっという間の出来事だっだ。元ライブドア社長の堀江貴文氏がツイッターで「マジでこんなんで起こすなクソ。こんなんで一々出すシステムを入れるクソ政府」とつぶやいたのも不思議ではない。
 ところがテレビや新聞は、「怖かった」「どこに逃げればよいのか」と戸惑い、不安を募らせる人々の声を繰り返し取り上げ、危機を強調する。驚いたのは、午前6時過ぎに落下が確認されたにもかかわらず、休校にした学校は公立で4校、私立で5校に上ったという。過剰反応というほかない。
 西日本新聞(8月25日付)が、熊本県上天草市で24日にあった弾道ミサイル発射を想定した避難訓練の様子を伝えている。住民の感想が的を射ている。勤務先の建物内に避難をした男性は「近くに落下したら建物内でもどうしようもないだろう。核弾頭だったら被害は甚大だ…」。60代男性は「戦時中の竹やり訓練のようでばかげている。地下壕を造るのならまだしも、何にもならない」と話したという。もっともだ。
 政府は「頑丈な建物や地下に避難して下さい」と言うが、真剣に危機管理を考えているなら、原発が狙われた時にどう対応するのか。再稼働など到底考えられないが、この点について政府は沈黙を続ける。メディアはうわべの危機を煽る政府に加担するのではなく、冷静な思考の下、原発大国が抱える潜在的な危機にこそ目を向けるべきだ。