ご意見紹介

<紹介>浜矩子「自公連合の圧勝を予測したメディアの責任は大きい」

※AERA 2017年11月6日

 経済学者キャプチャ同志社大学大学院教授の浜矩子さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、経済学的視点で切り込みます。

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 留学生対象の授業で、今回の衆院選を話題にした。英語の授業で、学生さんたちは日本人を含めて概ね世界20カ国から集まっている。平均年齢は30歳弱というところだろう。アジア、アフリカ、アメリカ、ヨーロッパ。実に多彩な顔ぶれだ。
 彼らの一人が質問した。なぜ日本の若者たちの安倍政権への支持率は高いのか。それに対して、面白い答えを提供した別の学生がいた。いわく、「最初から結果がわかっていたからじゃないか」。
 確かに、事前調査をもとに、新聞各紙が自公連合の圧勝を予測していた。相当に細かい数字を示して、与党の地滑り的大勝になると大見出しを掲げていた。それを見て、「どうせこうなるなら、別の党に投票しても意味ないじゃん」という心理が働いた、というのである。
 それだけではないと思う。今の若者たちは、将来に対する不安がとても深い。そのため保守的になる。寄る辺が欲しい。だから、「強い日本を取り戻す」式のメッセージに弱い。「高い有効求人倍率」や「人手不足」などというフレーズに引き寄せられる。彼らのなえる魂に、権力亡者たちがつけ込んでいく。
 だが、「結果わかってる論」も、なかなか怖い。実は筆者も少し似たことを考えていた。まだ投票日前なのに、実に緻密な予測表が新聞に出る。こんなものを見たら、有権者はみんなすっかりやる気がなくなるのではあるまいか。実際にそう考えた。
 やる気がなくなるだけなら、まだいい。ひょっとして、予測に沿った投票をしなくちゃいけないと思ってしまった人もいたかもしれない。日本人は、他者を失望させることや、他者の意向に沿えないことを嫌う。この優しきサービス精神に、あの事前予測が誘導効果をもってしまっていなかったか。
 いくら何でもそれはないだろう。多分。だが、どう投票すべきかわからず悩んでいた有権者の中には、あの一連の予測値を行動指針にしてしまった向きがあったかもしれない。特に若者がそうだったかもしれない。だとすれば、メディアの責任は大きい。そもそも、あそこまで懇切丁寧な予想を各紙競って示すのはなぜなのか。教えてほしいものだ。