今週のひと言

抑留者の思い

 敗戦後、ロシア・サハリン(樺太)からシベリアへ連行された民間人で、カザフスタンに抑留された阿彦哲郎さん(87)の半生が、同国の劇団により舞台化され21日、東京で上演された。一時帰国した阿彦さんは、母国での初の公演に胸を熱くした。
 樺太の本斗(現ネべリスク)出身。14歳で終戦を迎えた。母や弟、妹を港で見送り、父と引き揚げの機会を待っていた1948年、突然警察に逮捕された。
 「樺太の青年学校で軍事教育を受けていたことで反ソの疑いをかけられ、裁判で10年の懲役となった」という。行き着いた先はカザフ中部カラガンダ州の収容所。鉱山で石の採掘などの重労働を強いられ、肉体をむしばまれた。スターリンの死亡で釈放となったが、民間人だったためか日本人抑留者の名簿に自分の名はなく、「どこにでも行け」と放り出されたのが同州のアクタス村だった。
 芝居のタイトルは「アクタス村の阿彦」。カザフスタンの「アウエゾフ記念国立アカデミー劇団」によって昨秋、アマルティで初演された。「彼は多くを語らない。だから私が彼の心の世界に入ろうと努めた」と阿彦さん役を演じたドルガ・アクモルダさん(46)は言う。団長で同作品を発案したエルラン・ビラロフさん(46)は「スターリン時代はカザフの知識人も弾圧を受けた。現在、カザフには137の民族が暮らす。みんなが平和に暮らすことの大事さを表現したかった」と話す。
 異国で家庭を築いた阿彦さんだが、望郷の念は募り、「何度もカザフの日本大使館に手紙を書いたが相手にされなかった」と振り返る。旧ソ連崩壊後の1994年に初の一時帰国を果たし、2012年にはカザフ人の妻を伴い永住帰国。けれども日本での生活になかなかなじめず、2年後、カザフに戻った。
 「日本の子どもたちに平和の大切さを伝えられたら」と阿彦さんは願う。同作品は25日も上演される予定だ。

 自民党の憲法改正推進本部は20日、全体会合を開き、「改憲4項目」についての論点整理をした。9条については1項、2項を維持して自衛隊を明記する安倍首相案と、2項削除の2案の併記。年内の条文案作成は見送ったが、いずれにしても「平和憲法」がなし崩しとなることに変わりはない。
 「戦争ができる国」になることは絶対に避けなければならない。戦争の犠牲になり、国家や権力にほんろうされた人々の心を無にしないためにも。