お薦め本紹介

お薦め本紹介(2018年2月)

お薦め本紹介(2018年2月)
・偽装の被爆国
・主権なき平和国家
・地方議員を問う
・「日米指揮権密約」の研究
・強欲の銀行カードローン

偽装の被爆国

核を捨てられない日本
太田昌克
偽装の被爆国
「核の傘」という「幻想」にすがり<唯一の被爆国>がかぶる仮面
 「『唯一の被爆国』をアピールして被害者面するな」
 そんな声がいずれ世界から沸き起こるだろうと、本書を読んで確信した。日本はまさに「偽装の被爆国」である。「唯一の被爆国」という仮面の下で、安倍政権が核不拡散に逆行する行動を取っている実態を、綿密な取材をもとに論証する。
 米国の「核先制不使用」に対する反対表明、核兵器禁止条約交渉への不参加、安易な原発の再稼働、47トンというプルトニウムの蓄積量、インドとの原子力協定、これらは一体何を意味するのか。世界が日本の核武装を警戒するのも当然である。
 すべては「核の傘」や「核抑止」という日本政府が固執する幻想から始まる。「核を持てば強くなる」「核を持てば侵略の意図を抑止できる」という幻想である。
 「核戦略」は、「相手も自分と同じように考える」─その前提をもとに成立する。「相互確証破壊」が良い例だ。しかし「同じように考えない」主体が核を持てば成立しなくなる。失うものがない勢力に「核の傘」や「核抑止」は通用しない。「核の傘」は「破れ傘」という「幻想」となる。
 私の父は広島で原爆投下の惨状を、高射砲部隊の一員として目の当たりにした。しかし自分の見たことを一言も語らず、6年前に他界した。「非人道的」な核の惨状に、言葉を失ったからであろう。
 「核戦力を背景にした恫喝と威嚇を続けるトランプに同調し、下手をすると、その強硬路線に加勢しているように映る」
著書の懸念に、私は完全に同調する。核の緊張が高まる今こそ、日本は仮面を脱ぎ捨てる時が来た。(岩波書店1700円)

倉澤治雄(科学ジャーナリスト)

主権なき平和国家

地位協定の国際比較からみる日本の姿
伊勢崎賢治+布施祐仁
主権なき平和国家
日米地位協定こそ諸悪の根源 いかにして改定するか─その提案
 本書は、自衛隊日報問題を暴いたジャーナリスト布施祐仁氏が、かつてPKOで武装解除に携わった東京外語大教授の伊勢崎賢治氏に長時間インタビューをし、それを布施氏がまとめ、さらに伊勢崎氏が加筆した。
 布施氏が文献や資料を克明に漁り、伊勢崎氏がそれを確認する。見事な共同作業の成果である。
 「憲法観」だけに限れば、両者は必ずしも意見が一致するわけではない。布施氏が9条改憲に反対の立場なのに対し、伊勢崎氏はいわゆる「護憲的改憲論者」である。しかし、立場の違いを越えて「日米地位協定こそが諸悪の根源」であり、その改定がすべての大前提との主張で一致する。
 では、その「改定」とは何か? それは「在日米軍基地が日本の施政下以外の他国、領域への武力行使に使われることの禁止」であるとする。ただし、米国側が在日米軍基地の日本領域外への作戦使用を完全禁止する地位協定改定などに同意するはずもない。
 したがって、そのような場合は米国側が日本政府の了解を義務づけるよう、日米地位協定を改定するのが絶対条件だ。それを実現させるためには何が必要か。
 そこで、米国が各国と結んでいる地位協定と日米地位協定とを克明に比較する。ドイツ、イタリア、オランダ、イギリス、さらにはトルコやイラク、アフガニスタンでさえ日米地位協定よりも主権を確立しているという。そこから浮かび上がるのがタイトルの「主権なき平和国家」の意味だ。
 それを正す方策が「第五章 日米地位協定改定案」に結実する。ここが本書の白眉だ。日米安保体制を考えるなら、これを読め!と声を大にして言いたい本である。
(集英社クリエイティブ1500円)

鈴木耕(編集者)

地方議員を問う

自治・地域再生を目指して
梅本清一
地方議員を問う
マンネリ議会を活性化し、住民が主人公となるために
 富山県議・市議による政務活動費不正受給が発覚したのは2016年秋のこと。チューリップテレビ、北日本新聞など地元のメディアによる地道な調査報道によって明らかになった。18人もの議員がドミノ式に辞職するという前代未聞のスキャンダルだったが、それは何も富山県に限らない。
 日本各地で、それこそ今も政活費不正や人格を疑う発言など、議員をめぐるニュースは頻繁に報じられている。このような恥ずべき議員を生み出す土壌とは、どのようにして作られてきたのだろう。それに対する手立てはないのか。
 「地方議員は住民の代表ではない、住民の代理人に過ぎない」と著者は言う。にもかかわらず議員バッジをちらつかせ、まるで「代表」であるかのような振舞いをする議員たち。そう彼らに錯誤させる、私たち住民の意識にも問題があろう。
 自分たち地域の議員が誰であり、どのような政策や活動をしているのかを知らない。興味がない。そんな無関心さが議員、議会の怠慢さを招き、不正を不正と思わない、倫理にもとる感覚を育ててきてしまっている。
 著者は長年北日本新聞で議会政治、地方自治を取材してきたベテランのジャーナリスト。それだけに各地の議会の歴史、状況を熟知しての解説は明快だ。さらに議会活性化への提言として本来の地方分権を問い直し、過疎化が目立つ地方再生へ向けた今後の取り組み方にふれていく。権限・財源を中央から地方へ大幅に委譲することが「地方主権」となり、それはひいては日本再生への力になっていくはずだと。
 「政治の源流は地方にあり」。地方を動かす力は、私たち住民が主人公になれるかどうかだ。
(論創社1600円)

岡田孝子(元帝京平成大学教授)

「日米指揮権密約」の研究

自衛隊はなぜ、海外へ派兵されるのか
末浪靖司
「日米指揮権密約」の研究
米軍が自衛隊を指揮する「密約」の怖さ
 本書の題名「日米指揮権密約」とは「戦争になったら、自衛隊は米軍の指揮下に入る」という秘密協定をいい、これを著者は憲法9条に背く安保法制の成立に至る日本の対米従属の「代表」とする。
 ただし、この問題が本書で登場するのは、日米の合同軍事訓練を扱う序章、侵略戦争の反省の上に戦争放棄と戦力不保持を定めた憲法9条をもつ日本に、引き続き米軍駐留を認めさせようとする米国側の執念とこれに屈する日本側を詳述した第1章の後、第2章である。
 だが、こうした本書の構成は何らの不自然さを感じさせない。米本土にまで出向き中東地域を模した施設での日米共同訓練は、自衛隊の対米従属性の「到達点」である。
 1950年に武装警察隊(constabulary)として発足した警察予備隊が、旧安保条約の締結を経て1954年に自衛隊へと「変身」するなかで、米軍の戦時指揮権は、密約ながらも不動の前提とされていった。
 いや、日本国民の憲法9条への確固たる支持の下では、それに正反する戦時指揮権問題は、密約で取りかわす他なかった。第2章は、こうした自衛隊の「原点」を丹念に暴いていて圧巻である。
 日米の核密約もそうだが、密約の修正や変更は、表立って交渉するわけにはいかない。指揮権密約を頼みとする米国は、それを「暗黙の前提」として実行を迫るだけでよい。第3章から第5章は的確に跡付けている。
 こうした自衛隊を安倍9条改憲によって憲法に位置づけるとどうなるか。本書の告発から学ぶことは汲めども尽きない。
(創元社1500円)

小沢隆一(東京慈恵会医科大学・憲法学)

強欲の銀行カードローン

藤田知也
強欲の銀行カードローン
利用者の人生を狂わせても儲けを優先するモラル欠落の実態
 「2016年の自己破産の申立数、13年ぶりの増」「銀行のカードローンが原因か」─こうした指摘が、朝日新聞・経済記者である著者を銀行のカードローンに目を向かわせた。実際、何気なく見ているテレビでも目立つのが、有名俳優などを起用したメガバンクのカードローンCMである。
 「審査回答最短30分」、「コンビニATM手数料0円」など、誰でも簡単に口座開設ができるというCMが、生活苦にあえぐ利用者の心をくすぐる。その結果が「サラ金地獄」に代わる「銀行カードローン地獄」の招来だ。
 かつて大きな社会問題化した消費者金融など、貸金業者の貸出残高が減少の一途を辿る一方、銀行カードローンの貸出残高は増加傾向を続ける。その背景に「貸出額を年収の3分の1以下とする総量規制が消費者金融には適用されるが、銀行にはされない」ことにある。
 破たんする「アベノミクス」の金融政策の影響もあり、経営苦境にあえぐ銀行が「ラストリゾート」として、標的にするのが個人である。そこには、傘下に収めた消費者金融企業と二人三脚で、サラ金経営のノウハウが活用されている。
 「『利便性』のまやかし」「『顧客目線』無視、業界の論理」「利益優先でノルマ促進」など、著者は地道な取材を通して、利用者の人生を狂わせても利益を優先する銀行の強欲さ、モラル欠落の実態を明らかにする。
 本書は文末で「銀行の自浄作用」への期待を挙げるが、モラルハザードが常態化しつつある日本の金融界や経済界には、「ないものねだり」なのかもしれない。(角川新書800円)

栩木誠