今週のひと言

被ばくを免れる権利、健康を享受する権利

 「私たちには被ばくを免れる権利、健康を享受する権利がある。原発事故で命にかかわる権利が侵害されていることを世界に訴えたい」
 東日本大震災と原発事故で被災し、福島県郡山市から大阪に母子避難をしている森松明希子さん(44)が今月16日、スイス・ジュネーブで開かれる国連人権理事会の本会議でスピーチすることになった。
 森松さんは1カ月の避難所生活を経て当時3歳と6カ月の2人の子どもを連れて大阪に避難した。医師の夫は福島に残り、二重生活を余儀なくされている。同様に関西に逃れた母親有志と自助団体「Thanks&Dream」(通称・サンドリ)を2014年に結成。各地で暮らす被災者の手記や川柳を冊子にまとめるなど当事者の思いを発信し、「避難をする権利」を求めた原発賠償関西訴訟原告団の代表も務めている。
 国連人権理事会は昨秋、日本を対象に実施した普遍的定期的審査(UPR)の結果を報告書にまとめた。福島原発事故関連ではオーストリア、ポルトガル、ドイツ、メキシコの4カ国から勧告を受けた。このうちドイツ政府は「許容放射線量を年間1ミリシーベルト以下(現行は同20ミリシーベルト)に戻し、避難者及び住民への支援を継続すること」などを求め、特に妊娠している女性や子どもたちの「心身の健康に対する権利」を尊重することに力点を置いている。
 今回のスピーチは、国際環境NGO「グリーンピース」が本会合でのスピーカー申請を行い、当事者である森松さんがジュネーブに飛ぶことになった。
 それに先立つ8日、参議院議員会館であった院内勉強会に森松さんらとともに出席した海渡雄一弁護士は「子ども・被災者生活支援法ができたが、現状は被災者の自己決定権を踏みにじられ、このままでは強制避難区域に戻されてしまう事態に陥る」と危惧する。日本政府は4カ国の勧告を受け入れた。とはいえ「これまでの政策を続けながらという二枚舌の態度。我々市民もしっかり監視する必要がある」と指摘する。
 「生存権や個人の尊厳が守られる権利は憲法に書かれている。私たちがこうして声を上げるのは、震災で命を落とした人々がいるからです」と森松さんは言葉力を込める。
 11日で震災から7年。当事者の闘いはいまなお続いている。