今週のひと言

幹部自衛官のおぞましい暴言

 心底おぞましい事件が起きた。防衛省統合幕僚監部に所属する30代の男性3等空佐が4月16日夜、東京・永田町の参院議員会館近くの路上で、民進党の小西洋之参院議員に「お前は国民の敵だ」「お前の国会での活動は気持ち悪い」などと繰り返し罵声を浴びせた。戦前の驕り高ぶった軍人の姿が思い浮かぶ。1932年の五・一五事件や1936年の二・二六事件を想起した人も少なくないはずだ。それらの例えも、決して大げさではない。3佐が小西議員のどこに反感を抱いたのかは必ずしも明らかではないが、その言葉からは「自分こそが正義」という身勝手な自意識がうかがえる。まさに五・一五事件や二・二六事件を起こした軍人たちと共通する独善的な心情だ。
 自衛隊は、日本の平和と独立を守るのが任務。それは、多様な価値観や自由な表現活動が担保された民主主義社会の日本であるはずだ。自衛隊を違憲と考え主張する人たちがいても、その人たちの存在を含めてそのままの社会を守らなければならない。まして国会議員は国民の付託を受けた代表だ。その議員を敵視し、激しい敵意を直接ぶつけるとは、民主主義の否定に等しく、自衛官として絶対に越えてはいけない一線を越えた。到底その任にとどまるのを容認するわけにはいかない。
 危ういのは小野寺五典防衛相の態度だ。3佐について「若い隊員で国民の一人でもあるので、当然思うことはあるだろう」と発言。3佐を擁護するものとして、野党の批判を浴びた。厳罰に処すると自衛隊の士気が下がるなどと考え、仮にも寛大な処分を考えるとすれば、必ず将来に禍根を残す。戦前、政党政治が終えんを迎えた要因には、政友会があまりにも親軍的になっていったことも数えられる。小野寺防衛相は毅然として処分を下すべきだ。
 守るべき対象を敵呼ばわりする、その光景に重なるのは、安倍晋三首相が自らの退陣を求める人たちを指して「こんな人たちに負けるわけにいかない」と言い放った姿だ。自分こそが正しいという独善性を首相が常日頃から隠そうともしないことが、自衛官のおぞましい暴言を生み出した一因になっていないか。安倍首相はそのことに気づくべきだ。