今週のひと言

「正常化」って何だ?

 朝日新聞の5月9日夕刊の見出しは、『国会、19日ぶり正常化 野党復帰 働き方改革、焦点』。もちろん、朝日だけではない。野党が国会審議に戻ることが決まり、新聞各紙、テレビ各局に「正常化」の言葉が踊る。野党の審議拒否が「正常」でないかのような印象を与えていないか。
 「異常」はいまも続いている。
 10日にあった衆参両院の予算委員会。加計学園の獣医学部新設計画をめぐり、柳瀬唯夫・元首相秘書官(現経済産業審議官)が参考人として出席し、加計学園関係者との官邸で計3回面会したことを明かした。
 これまで柳瀬氏は関係者との面会について「記憶にない」を繰り返してきた。一転して記憶が戻ったのはなぜか。だれでも気になるが、その点を問われると、「聞かれたことを一つひとつ答えて、全体像が見えなくなってしまった」と意味不明の弁解をした。もっとも、首相への報告を聞かれると即座に「ない」。ここは記憶が明確らしい。
 虚偽答弁。公文書の改ざん、隠蔽。データの捏造。セクハラ。暴言……。「安倍一強化」で「政」と「官」の劣化をこれでもかと見せつけられてきたが、明らかに噓をいっているとしか思えない柳瀬氏の発言をテレビで聞きながら、「異常」な事態がいつまで続くのか暗澹たる気分になった。
 異常事態の背景にあるのは、安倍政権下で広がる無責任な政治の姿である。
 「信頼回復に向けて必ず全容解明し、うみを出し切る」。安倍晋三首相の決まり文句だが、こんな言葉を間に受ける人がいるだろうか。数えればきりがないが、例えば、2013年の五輪招致のプレゼンテーションでは、東京電力福島第一原発の汚染水について「アンダー・コントロール」。
 政治家は言葉に責任を負う仕事だが、安倍首相の言葉からは一貫して責任のかけらも感じられない。言葉に責任を持つ政治が復活しない限り、「正常化」なんて言えない。