今週のひと言

「憲法擁護義務」はどこへいった?

 「国の理想を語るものは憲法。憲法審査会で、政党が具体的な改正案を示すことで、国民の皆様の理解を深める努力を重ねていく。そうした中から、与党、野党といった政治的立場を超え、できるだけ幅広い合意が得られると確信する。最終的に決めるのは、国民。制定から七十年以上を経た今、国民の皆様と共に議論を深め、私たち国会議員の責任を共に、果たしていこうではないか」―10月24日の安倍首相の所信表明演説だ。
 改憲については「自民党総裁として、」と断わって発言していた安倍首相だが、このところ、首相の立場での発言でも平気で改憲への意欲を語るようになった。2日の内閣改造の記者会見で、「(総裁選では)次の国会に改正案を提出できるよう、党を挙げて取り組むべきであると申し上げて、勝利を得た。結果が出た以上は、党では、下村憲法改正推進本部長の下にさらに議論を深めて、作業を加速させていただきたい」と述べたのに続いて、
 14日の自衛隊観閲式では「今や国民の9割は、敬意をもって自衛隊を認めている。かつては、厳しい目で見られた時もあったが、ひたすらに、その職務を全うし、諸君自身の手で信頼を勝ち得た。次は、政治がその役割をしっかり果たしていかなければならない。全ての自衛隊員が、強い誇りを持って任務を全うできる環境を整えるのは、今を生きる政治家の責任だ」と述べ、各紙とも「改憲への意欲を示した」と書いた。
 問題なのは、こうした改憲容認、それを加速させる発言について、メディアの正面からの批判がほとんどないのはどうしたことか。
 憲法99条は、天皇から公務員まで憲法擁護の義務を規定している。国民主権、基本的人権の尊重、そして戦争の放棄の3原則はもちろん、政治には、常に憲法をベースに臨むことが求められている、ということだ。安倍首相の発言と意味だけを伝え、批判がないのは、結局、首相の宣伝になる。自民党の伊吹文明元衆院議長は、安倍発言に「首相が国会にああいうことを言うことはいいのかなという感じはした」と述べたが、まずメディアが先頭に立つべきではないのか。