今週のひと言

ゴーン前会長逮捕と地検特捜部

 カルロス・ゴーン日産自動車会長の11月19日の電撃逮捕には驚いたが、即時に日産が会長職の解任、代表権のはく奪を言明したことにも少なからず驚いた。密かに内部調査を進めていたのだという。11月22日の臨時取締役会で会長解任などを決めた。ゴーン前会長の経営支配から脱したその迅速ぶりが際立つ。東京地検特捜部と綿密に意思を疎通させていなければできないことではないか。
 前会長の金融商品取引法違反の容疑は、5年分の報酬を約50億円少なく有価証券報告書に記載したとの内容であり、本当なら許されないことには違いない。ただ虚偽事実の公表は、投資家の判断に悪影響を与えるから問題なのであり、悪質さという点では、企業業績の粉飾ほどに重いとは思えない。また、報酬には税法上の問題が出てくるが、ゴーン前会長の納税状況ははっきりしたことは伝えられていない。そもそもトップの報酬のごまかしが、日産ほどの巨大企業でトップと一部の側近だけでできることなのか。日産とルノーの間には提携を巡って確執があったということも報じられている。ルノーはフランス政府が筆頭株主で、そうなると日仏の国策絡みの背景事情はないのか。
 前会長が容疑を認めているのかも一般には不明なまま、経営からの放逐だけは迅速に決まったとの印象が強い。それを可能にしたのは東京地検特捜部による前会長の逮捕だが、では特捜部はなぜ、日産の内部調査結果の公表を待たずに逮捕に踏み切ったのか。法務検察当局、さらには首相官邸との間で事前に協議があったのか、なかったのか。
 思うのは、同じ特捜検察である大阪地検特捜部が森友学園の土地取引問題を巡り、財務省の公文書改ざんを立件しなかったことだ。日本の民主主義の根幹にかかわる、はるかに重要な問題だったのに不問に付した。特捜検察とはいったい何なのか。2010年に発覚した大阪地検の証拠改ざん事件を機に、特捜検察は解体的出直しを図ったはずだ。どう変わったのか、変わっていないのかはマスメディアの報道の課題でもある。ゴーン前会長や日産というビッグネームばかりに目が行きがちな事件だが、特捜部の動きの綿密な検証が必要だ。