今週のひと言

負けるわけにはいかない

 過去に書いた記事を「捏造」と書かれて、大学の職を失い家族の生命の危険にまでさらされた元朝日新聞記者・植村隆さんが、「捏造」と書いた研究者・西岡力氏らを名誉棄損で訴えた裁判は、東京地裁で棄却の判決を下された。西岡氏の「捏造」との表現により植村氏の名誉が毀損されたことは判決で認められたが、西岡氏の記述には「推論として一定の合理性がある」などと、真実と信じるに足る相当性があるとして免責した判断だ。
 しかし、真実相当性があるとして免責を認めるためには、その報道された事実を基礎づける確実な根拠・資料が必要だというのがこれまでの判例で、今回はそのような根拠や資料がないばかりか、植村さん本人への取材もなく、「捏造」というジャーナリストにとって死刑判決にも相当する強い表現を用いたことを、判決はまったく問題にしていない。これは従来の判例も踏まえていない異常な判断だと言わざるを得ない。
 この裁判の過程で、西岡氏本人への尋問により、西岡氏自身が、自ら名乗り出た元慰安婦の金学順氏の証言を勝手に創作して自説を補強していたという、まさに「捏造」と言える行為を自ら行っていたことも明らかになった。今回の判決は、これらの立証も黙殺した。
 この裁判を担当し、判決直前で異動となった原克也裁判長は、昨年11月に結審した後、今年2月に突如弁論を再開して、朝日新聞の誤報を検証した「朝日新聞第三者委員会報告書」を証拠採用し、判決に利用している。これは、原裁判長は初めから植村さんを敗訴させるために、あえて弁論を再開して、西岡氏らに有利な証拠を採用したとしか思えない。しかも、人事異動が行われた後の4月に、わざわざ最終弁論を開いてもいるのだ。この執念はいったい何なのか。そこまで裁判官は政治に忖度しているのか。
 このような司法・政治による圧力に、ジャーナリズムが負けるわけにはいかない。