今週のひと言

にせの争点にだまされるな

 参院選が4日公示された。安倍晋三首相は、通常国会が閉会した6月26日の記者会見で、「憲法の議論すらしない政党を選ぶのか。自分たちの考えを示し、議論を進めていく、その政党や候補者を選ぶのか。それを決めていただく選挙だ」と改憲への姿勢が選挙の争点の一つだと強調した。
 にせの争点化である。
 「憲法改正問題」と「憲法問題」はまったく別ものである。多くの野党が拒否しているのは、9条への自衛隊明記など合理的根拠を欠く自民党の改憲4項目の土俵に乗ることであり、政党として合理的な選択である。
 私たち有権者がいま考えるべきなのは、真の「憲法問題」である。例えば、解散権の乱用。安倍政権は、野党議員を揺さぶる手段として解散権を党利党略のために使っている。解散制度の趣旨に反し、いかに制限をかけるかは待ったなしの課題だ。
 2017年の総選挙を振り返ると、安倍政権は憲法53条に基づく野党の臨時国会要求を90日以上も無視し続けた揚げ句、臨時国会を開くや、冒頭で解散に踏み切った。憲法53条違反と解散権の乱用という二重の意味での憲法の蹂躙が行われた。
 憲法9条に関する従来の政府解釈を自己都合で変え、集団的自衛権を行使できるようにして生まれた安全保障法制は、違憲の存在である。政府解釈を2014年7月の閣議決定の前の状態に戻すことも依然、課題として残っている。
 この秋に行われる大嘗祭は、その宗教的性格から憲法の政教分離に違反する疑いがある。大阪高裁も「政教分離規定に違反するのではないかとの疑義は一概には否定できない」と指摘した。何より、皇族である秋篠宮が、「宗教色が強いものを国費で賄うことが適当かどうか」と述べ、政府は公費を支出するべきではないとの考えを示している。
 安倍政権による権力の乱用や政教分離をどう考えるかという、真の「憲法問題」の議論を深めるべきだ。野党もメディアも、安倍政権の権力の乱用を参院選の争点の一つに据えればよい。安倍首相が作り出すにせの争点に踊らされてはならない。