今週のひと言

立ち上がった演劇、映画人

 官邸とメディアの裏側を題材にした映画「新聞記者」がヒットを飛ばしている。先月28日の公開から興行収入は早くも2億円を突破。13日からの連休でさらに勢いづきそうだ。
 ダブル主演の一人は、韓国の女優で日本語が堪能なシム・ウンギョンさん。新聞社の社会部記者役で、父は日本人、母は韓国人で米国育ちという設定。もう一人の松坂桃李さんは、外務省から内閣情報調査室に出向中の官僚を演じる。原案は、東京新聞の望月衣塑子記者の同名の著書。河村光庸・エグゼクティブプロジューサーが企画・製作を担い、32歳の藤井道人監督を起用して政治サスペンス映画を完成させた。
 「国境なき記者団」(本部・パリ)が毎年発表している各国の自由報道度ランキングで日本は昨年、180カ国・地域のうち67位。その前年は72位で、2002年の26位に比べると著しく転落した。安倍政権下、「言論の表現の自由が窮屈になってきた」と感じ、記者らの姿を通してこの閉塞感を描こうとしたのが、劇作家の永井愛さん主宰の「二兎社」による演劇だ。テレビの報道現場を舞台にした「ザ・空気」(17年)と、続編で国会記者会館に視点を当てた「ザ・空気ver.2誰も書いてはならぬ」(18年)が予想以上のヒットを放ち、映画界では「新聞記者」が登場した。
 この数年、日本で起きている官邸の横暴、忖度(そんたく)に走る官僚、それを平然と見過ごす一部メディア。「最後の砦である新聞でさえ、権力の監視という役目が薄まっている」と河村さんは指摘する。
 権力に抗う記者の姿を描いた作品に関心が集まるのは、言い換えれば新聞やテレビなどのマスメディアへの信頼が揺らいでいることにほかならない。「表現の自由」を掲げて立ち上がった演劇人や映画人といまこそ共闘するときだ。