今週のひと言

四・三事件と2人の首脳

 「民主主義の基本は言論の自由。その言論が封殺されただけではない。島と島の人間の魂も破壊された」。
 韓国南端の済州島で起きた民衆蜂起で、多くの命が奪われた「四・三事件」から今年で60年。東京・日暮里のホールで21日夜、開かれた記念のつどいで、在日コリアンの作家、金石範さん(82)は声を震わせた。
 四・三事件は1948年、米軍政下の済州島で、南朝鮮単独選挙による南北分断などに反対する蜂起が発生。武力鎮圧で約3万人が虐殺されたといわれる。80年代以降、韓国の民主化運動とともに真相究明運動が本格化。金大中政権下の99年、犠牲者の名誉回復に関する特別法も制定された。長い間、歴史の闇に葬られていたこの事件に光を当てようと力を尽くしたのが、金さんをはじめとする在日コリアンや日本人の有志だった。
 島では毎年、4月3日に慰霊祭が行なわれているが、「今年は李明博大統領が式に来ないばかりか、メッセージもなかった」と関係者は憤る。
 永田町の首相官邸で、「新時代を切り開く」とすました顔で握手した日韓の首脳。弾圧の苦しみを経験し、平和を希求する民衆の思いとかけ離れたところに2人はいるような気がしてならない。