今週のひと言

『美味しんぼ』が訴えたこと

 週刊『ビッグコミックスピリッツ』連載の人気漫画「美味しんぼ」で、福島を訪れた主人公が鼻血を出す場面が「誤解を招く」「不安をあおる」などとさまざまな批判を受けた。同誌編集部では、次の号で識者の意見や寄せられた抗議文などを10ページにわたって掲載し、編集部の見解も明らかにした。
 報道機関でもない漫画雑誌がとった対応としては極めて誠実で、真摯な態度だったと思う。この問題について、考えておきたいことがいくつかある。
 まず、鼻血のシーンばかりが取りざたされているが、「美味しんぼ」では24回にわたって「福島の真実」のシリーズが連載され、その中では福島で安全な食品を生み出すべく奮闘している地元の人々の姿が活写されていること。
 原作者の雁屋哲氏は二年にわたって現地取材を重ねており、鼻血のエピソードも彼自身の体験だったこと。
 編集部に寄せられた意見は、放射線医学の専門家を含めて、外部被ばくと内部被ばくの相違を考慮していないように見受けられること。そして、内部被ばくによる健康被害については、科学的に解明されていないことがまだ多いこと。
 官房長官をはじめ政府の閣僚がこぞってこの漫画を批判したのは、内部被ばくによる健康被害の実態を調査し始めたらたいへんなことになる、と恐れていたのではないかということ。
 最後に、私も鼻血が出た、と言うことすら憚られるような空気が、今回の騒動によって作られてしまったのではないかということだ。この点については、メディアにも重大な責任があると思う。言いにくいことを率先して言えるようにする、その努力をメディアがしなければ、言論・表現の自由なんてもろくも崩れ去ってしまうからだ。