文献紹介

 データでみる「憲法」の本 2004年の状況

 A 概況
  国会図書館のホームページでタイトルかサブタイトルに「憲法」がつく本を検索すると6500点ほど出てくる。年次を追ってみると、施行後の1948年にひとつのピークがあり98点刊行されている。ただし、データがよく整理されていない時期で、重出もあって実際はもっと少ないが、一方、一定数あったと推測される「草の根版」等、登録されてないものもあると思われる。いずれにしても、その後は、高度成長で本の点数がふえるにもかかわらず、憲法の本は増加してない。定番のテキストがあり、安定していたともいえるであろう。施行40周年の87年に103点とやっと三桁に達する。その後、二桁にもどる年もあるものの、90年代に増加をつづけ、2001年に200点をこえる。
  この中には、『アメリカ憲法』『アジア憲法集』といった世界各国の憲法についてのものも一定数含まれ、また聖徳太子の本もある。もっとも多いのが、大学のテキスト、司法試験をはじめとする各種資格試験用のテキストである。点数の増加は、定番の大冊がなくなり、テキストが目的別に少ページ、多様化したことにもよると思われる。

 B 2004年の状況
  2004年は238点、前年比7%余りの増加である。昨年の点数増加は、やはり憲法「改正」論議を反映したものと思われる(この他に、「改憲」「護憲」等で抽出される本もあるわけである)。「改正案」だけでも以下のものがある。
  ①西部邁『わが憲法改正案――「大切な心」を忘れた日本人』ビジネス社、4月
  ②川本兼『自分で書こう!日本国憲法改正案』明石書店、5月
  ③自由民主党『憲法改正のポイント』6月
  ④中川八洋『国民の憲法改正――祖先の叡智、日本の魂』ビジネス社、7月
  ⑤読売新聞社『憲法改正』中央公論新社、8月
  ⑥江口克彦・永久寿夫『二十一世紀日本国憲法私案――新しい時代にあった国づくりのために』PHP研究所、11月
  ⑦豊城実澄『命主主義に基づく日本の改革案と新生日本国憲法草案』ブイツーソリューション(星雲社)、12月

 日本国憲法の理念擁護派の本も「改正」派の本以上に多くでている。
  執筆者も奥平康弘・樋口陽一氏等、憲法学の大家のものだけでなく、専門家以外の文化人のものがかなり多い。『日本に生まれて――女性が考える日本国憲法』(ハロラン芙美子・中沢けい・冨士真奈美・高橋洋子・樋口恵子・下重暁子・沖藤典子ほか)阪急コミニケーションズ、12月 、という19人の女性筆者によるものもある。改憲の是非を論ずるのでなく、実感を短い文章にしたものである。ただし、執筆者の多様化は、多くの人の参加という積極面と同時に、国の基本を定める高度な理念の問題が「ポピュリズム化」しているという危険な面をふくんでいることも認識しておく必要があろう。
  チャールズ・オーバービーほか『第9条を地球憲法に』第9条の会・オーバー東京、5月、のような9条に焦点をあてたものも多い。
  両派の討論、論点整理型の本、資料集的なものもでている。
  渡辺治・今井一『対論!戦争、軍隊、この国の行方――九条改憲・国民投票を考える』青木書店、4月/憲法プロジェクト2004『日本の憲法――国民主権の論点』講談社、 8月/憲法改悪阻止各界連絡会議・労働者教育教会編『憲法「改正」論議の本質と、改憲阻止の展望』(資料集)学習の友社、9月/などである。憲法再生フォーラム『改憲は必要か』岩波新書、10月も論争を意識したものである。
  雑誌の特集もあった。『現代思想〈特集〉日本国憲法』青土社、10月/『インパクション〈特集〉憲法という「戦場」』インパクト出版会、12月/など。『現代思想』特集は、井上ひさし・小森陽一の対談など、読み応えがある。

新村 恭