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人権が根付かない日本<伊藤和子さん>
伊藤和子さん 「直言35」弁護士 伊藤和子さん

人権が根付かない日本
(新聞労連の機関紙の06年8月1日号より転載)

 「日本から新しい国際貢献の流れをつくろう」と弁護士やジャーナリストら有志による人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」がこの夏、設立された。事務局長は弁護士の伊藤和子さん。「貧困の問題や人権侵害は平和の問題とつながっている。これまで弁護士がかかわる人権活動は国内の問題が多かった。私たちも国境を越えて何かやるべきだと思い立った」と張り切る。【明珍美紀】

●世界の人権問題に取り組む米国のNGO
 日弁連の推薦で昨年末まで約1年半、米国のニューヨーク大のロースクールに客員研究員として留学していた。アメリカの人権NGOで研修活動も行い、そこで視野が広がりましたね。
 私が参加したのは途上国の公益弁護士のプログラム。途上国から人権弁護士がたくさん来ていて、国連が示す国際人権基準と現実とのギャップを埋めようと貪欲に学び、どんどん伸びようとしていた。
 「9・11」以後の人権問題としてキューバにあるグアンタナモ米海軍基地の収容者の問題があるが、その代理人をしている人権NGOでも活動した。驚いたのは、こうしたNGOが国内問題だけでなくスーダンの人権侵害など世界のさまざまな問題に取り組んでいたこと。日本では「人権問題をやっている」と言うと政治的だとか偏った見方をされることがあるが、米国では社会に人権が根付いている。それだけ人権侵害を経験してきたからだと思うが「随分と先を進んでいる」と刺激を受けたし、「弁護士もNGOとして外に出ていいんだ」と私の弁護士観も変わってきた。

●憲法9条を実質的にする行動を
 いままで弁護士がかかわる活動は国内の人権問題が多かった。国境を越えて何かやるというのは少なく、系統的ではなかった。私自身、これまで人身売買や子どもの性的商業的搾取の問題にかかわり、立法やロビー活動をしてきたが、法律ができたり、国際会議が開かれると「もうこの問題は終わり」という雰囲気になり、実際にはアジアの子どもたちが性的搾取をされている状況は変わらなかったりする。開発や貧困の問題、人権侵害は平和の問題とつながっている。そこを解決するような方法を考えていきたいと思い、有志と「ヒューマンライツ・ナウ」を始めることにした。
 どうしたら戦争ができない世界にできるのか。近隣諸国に貢献したり、アジアのNGOとネットワークつくってともに生きていくオルタナティブ(もう一つの)な活動ができたらいいと思っている。それが憲法9条を実質的にしていくことではないか。

●メディアは人権の文化を育んで
 先日、ある全国紙の記者に「人権を担当している人がいるか」と聞いたら、「いまはなかなかいないんだよね」と言われた。司法記者クラブの記者はいるけれど、本当に人権問題をライフワークに取り組んでいる記者は少ないと思う。
 声を上げる人、権利を主張する人が生意気だと言われて批判の対象になることがある。メディアはその先を行ってほしい。「これはおかしい」「人権の問題として取り組んでいこう」という人たちを励ます、あるいは勇気付けるような文化を育ててほしい。


いとう・かずこ
66年生まれ。早稲田大学法学部卒業。94年弁護士登録。以後、アジアの子どもに対する商業的性的搾取・女性に対する暴力の問題や米軍横田基地公害訴訟、イラク邦人人質事件などに取り組む。現在、日弁連国際人権問題委員会幹事など。7月28日、東京で設立された人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」では事務局長に就任。
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