市民が支えるメディアin韓国

    2018/12/07

     韓国・ソウルにあるインターネット放送局『ニュース打破』を訪れる機会があった。
     『ニュース打破』は2012年1月、当時の李明博大統領率いる保守政権下で生まれた。KBS・MBCといった公共放送局で政権批判の番組を制作したり、ストライキでたたかったりして解雇処分を受けたジャーナリストたちが設立したメディアだ。いま、各地でドキュメンタリー映画『共犯者たち』が上映されているが、これは『ニュース打破』が製作したもので、権力による容赦ないメディア弾圧と、それに迎合してしまうマスメディア、一方で激しく抵抗するジャーナリストたちと労働組合のたたかいが克明に記録された作品だ。
     解雇されたディレクターたちが無報酬でニュースを作ってユーチューブなどにアップしたのが『ニュース打破』の始まりだが、それは全国言論労働組合(新聞・放送などメディア業界の産業別労働組合)から2000万ウオンの支援を受けて、六ヵ月間限定のプロジェクト事業としてスタートしたものだった。初放送の直後から「支援したい」という市民の声が自発的に寄せられたが、『ニュース打破』は主流メディアが権力監視の役割を果たしていないというお詫びの気持ちで始めたので、市民からの支援を断っていたという。
     しかし、プロジェクトが終わる2012年夏、その年の暮れの大統領選に向けて、保守政権に掌握されていた主流のメディアは与党候補を集中的に報道していた。そこで『ニュース打破』は野党候補も取り上げて公正な報道をするため、一時的に市民の後援を受けることにした。すると、選挙が終わるころには支援者が2万人に達したという。労組が誕生に手を貸したメディアが、市民によって育て上げられたのだ。
     その後、政権を厳しく批判する調査報道を連発して市民の支持を広げた『ニュース打破』は、約3万4000人の会員、年間予算50億ウオンという一大メディアに成長した。このように、ジャーナリストと、市民と、そして労働組合が手を取り合えば、日本でも何かできることがあるのではないか。