人権を蹂躙する武器

    2018/10/13

     「声をあげられない人々の声になる」--。
     「イスラム国」(IS)による性暴力の被害体験を証言し、ノーベル平和賞受賞者に決まったナディア・ムラドさん(25)は、米ワシントンでの記者会見(8日)で決意の言葉を述べた。クルド系少数派ヤジディー教徒。イラク北西部シンジャルに近いコチョ村で生まれ、2014年8月にISが侵攻した際、母親や兄弟を殺害された。自身は拉致され、脱出するまでの約3カ月間、繰り返し性暴力を受けた。想像を絶する心身の苦しみを押して被害の実態を伝えてきたムラドさんは、同賞を「すべての被害者や迫害される少数者と分かち合いたい」と語った。
     男性を殺害し、女性を強姦する。性暴力を攻撃の一つの手段にするのは、敵対する民族やその地域の住民らに精神的な苦痛を与え、恐怖をもたらすのが目的だ。旧ユーゴスラビアからの独立をめぐるクロアチア紛争やボスニア紛争など、1990代以降、この傾向は顕著になってきた。ボスニア紛争で性暴力の被害を受けた女性は2万5000人余に及ぶといわれ、被害者は「汚れた存在」としてコミュニティーから追放されることもあったという。同時受賞したコンゴ民主共和国の婦人科医師、デニ・ムクウェゲさん(63)は、「レイプがコストの安い戦争の武器として使われている」と訴え続けてきた。
     日本について言えば「戦時下の性暴力」として旧日本軍による「慰安婦」問題があり、いまなお被害者への謝罪や補償問題は完全に解決していない。
     戦争や紛争が起きれば、人権が蹂躙(じゅうりん)される。日本を「戦争ができる国」にしようとする為政者たちには、想像も理解もできないことに違いない。